京都大学iPS細胞研究所の高橋淳教授ら研究チームは、2017年8月30日、ヒトのiPS細胞から作った神経細胞をパーキンソン病のサルに移植し、手足の震えなどの症状が軽減したとする研究成果を発表した。2018年夏から秋にかけて、パーキンソン病者を対象にした臨床試験の開始を目指す。京都大学iPS細胞研究所に蓄積したiPS細胞を利用して行う方針。

研究チームは、パーキンソン病患者などの細胞をもとにしたiPS細胞からドーパミンを出す神経細胞を作製。パーキンソン病の症状を再現したカニクイザルの脳に移植した。移植後1年間経過を観察すると、震えや運動能力の低下などパーキンソン病の症状が軽減した。健康な人の細胞をもとに作った神経細胞を移植した場合でも同じ結果だったという。また、安全性を確かめるため、MRIなどを使って移植後約2年間、移植した細胞の変化を観察したが、腫瘍にはならなかったという。

パーキンソン病は、脳の神経伝達物質であるドーパミンを出す神経細胞が減ることで発症する。手足の震えや歩行障害などが起こる。国内には約16万人の患者がいるとされる。既存薬や電極を脳に埋め込む治療法などで症状の改善はできても、根治はできない。