厚生労働省の専門部会は、2019年2月18日、iPS細胞を使って脊髄損傷の患者を治療する慶應義塾大学の臨床研究計画を承認。2019年夏に始まる見通し。計画では、脊髄を損傷して2~4週間たった「亜急性期」で、運動などの感覚が完全にまひした18歳以上の患者4人が対象。移植から1年かけて安全性や効果を確かめる。背中を通る中枢神経が傷ついた脊髄の治療法はまだないため、期待されている。

脊髄損傷の治療では、受傷後2~4週間の内に神経幹細胞を移植する必要があるという。患者本人からiPS細胞を作ると半年以上かかるもようで、最適な移植時期に間に合わない。そのため、多くの人に適合しやすいタイプの細胞を集めて貯蔵する京都大学iPS細胞研究所の「iPS細胞ストック」を利用。ストック細胞から神経のもとになる細胞を作り、冷凍保存。必要になった時に解凍して患者に移植できるようにする。


iPS細胞で脊髄治療 研究成果一覧

【iPS細胞由来の神経細胞 冷凍保存技術を確立】
慶應義塾大学の岡野栄之教授やアビー、日本ユニシスは、ヒトiPS細胞由来の神経細胞を冷凍保存する技術を確立したもよう。アビーが持つ魚など生鮮食品の鮮度を保つために開発された冷凍技術を応用。冷凍保存し、解凍した後の細胞の生存率を34%から70%に高めた。生存率が約2倍になったことで、臨床応用に使える水準に到達したという。


【iPS細胞で脊髄治療 マウスで病状改善】
慶應義塾大学の岡野栄之教授ら研究グループは、2016年1月18日、ヒトiPS細胞から作った神経のもとになる細胞を、脊髄を損傷したマウスに移植し、病状を改善させることに成功したと発表した。信号伝達を早める働きがある髄鞘の再生やニューロンが神経回路を作製、神経の成長を促す物質も分泌されたという。


iPS細胞ストック構想

京都大学iPS細胞研究所は、治療に使うiPS細胞をあらかじめ作って備蓄する「iPS細胞ストック構想」を進める。他人に移植しても拒絶反応が起きにくいiPS細胞を複数作って冷凍保存。2018年までに日本人の30~50%、2023年までに80~90%に移植できるiPS細胞を揃えることを目標としている。

  2014年 2018年 2023年
対応率 20% 30~50% 80~90%


再生医療 脊髄損傷治療の関連企業

コード 企業 脊髄損傷治療関連
7779 サイバーダイン 慶應大学の脊髄再生医療とHAL医療用の複合治療で共同研究
8056 日本ユニシス 細胞を生きたまま冷凍する装置


【サイバーダイン】
サイバーダインと慶応義塾大学は、2016年4月、脊髄再生医療とロボットスーツHAL医療用の複合治療で共同研究を開始すると発表した。iPS細胞を利用した再生医療とHAL医療用を組み合わせ、脊髄損傷に対する新たな治療法を開発する。臨床試験で効果を確認後、HALだけでは十分な効果が得られなかった患者に、iPS細胞から作った神経細胞を移植。HALで訓練して治療するもよう。 


【日本ユニシス】
細胞を生きたまま冷凍する装置の実用化を目指す。再生医療の実用化には細胞を加工したり移植したりする直前まで冷凍して品質を保つ必要があるという。また、冷凍保存した容器の温度や湿度などを遠隔で管理するシステムも開発する。

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