中国景気への不安感が高まっている。中国の失速が世界にどのような影響を及ぼすかに焦点が移っていることから、国際通貨基金(IMF)による実質成長率の影響試算や主力品の輸出を中国に頼っている国、資源国で影響が大きいとみられる国をまとめた。

中国人民元の切り下げでアジア各国の通貨が下落し、相対的にドル高が進めば、現地通貨に換算した返済額が膨らみ、業績の足を引っ張りかねない。ドル建て債務を抱える企業は対応を迫られる。


実質成長率

国際通貨基金(IMF)は中国の実質成長率が1ポイント低下すると、翌年にはそれ以外のアジアが0.3ポイント、アジア域外の世界が0.15ポイント低下すると試算している。

中国 影響
中国以外のアジア アジア以外の世界
▲1ポイント ▲0.3ポイント ▲0.15ポイント


経済協力開発機構(OECD)は、中国の成長率が2年間で2%下落すると、日本経済は年0.5%~0.6%程度低下しかねないと試算している。

中国 日本
2年で▲2% 年▲0.5%~▲0.6%


貿易・投資

韓国、マレーシア、タイ、台湾などの国・地域は主力品の輸出を中国に頼っている。韓国・マレーシアは機械・輸送機器を、タイは原材料を、台湾は電子部品を輸出。

韓国は輸出先で中国の割合が25.5%。また、中国株投資額は7.4兆ウォン(約0.8兆円)で海外株式投資全体の40%に上るもよう。

内容
ベトナム 中国からの輸入が全体の30%。
韓国 輸出先で中国が25.5% 中国株投資額が海外株式投資額の40%
マレーシア 機械・輸送機器
タイ 原材料
台湾 電子部品を輸出。2015年度GDP成長率見通しを3.28%→1.56%に下方修正

【ベトナム】
中国からの輸入が全体の約30%を占める。中国経済の停滞で中国国内の鉄鋼需要が減少し、安い価格でベトナムなどに流入。1-7月の鉄鋼輸入額は前年比15%増とみられる。ベトナムは元安に伴い競争力が増す中国製品への対応が急務になる。

ベトナム国家銀行は、2015年8月19日、通貨ドンの対ドル相場の基準レートを1%切り下げた。また、取引許容変動幅を上下2%から3%に広げた。


【マレーシア】
マレーシア中央銀行は4-6月期の実質GDP成長率を4.9%と発表。輸出が3.7%減。原油安を背景に原油やパーム油の輸出が低迷。中国景気の減速に伴い、総輸出額の約10%を占める対中貿易も低迷している。

通貨リンギは、景気の低迷や米国の利上げ観測、中国景気の減速に伴う投資マネーの逆流で安値推移。通貨当局はリンギ防衛のためにドル売り介入を続けているもよう。原資となる外貨準備高は2015年7月時点で967億ドル。2014年7月の1318ドルから27%減少した。


【タイ】
2015年度の実質GDP成長率見通しを、2015年5月18日に3.5~4.5%から3~4%に、2015年8月17日に2.7~3.2%に下方修正した。輸出見通しを1.2%増から3.5%減に下方修正。中国の景気減速などで天然ゴムなど農産品のほかトラックや化学品などの工業製品も低迷する。民間消費は3.8%増から1.8%増に下方修正。消費者心理の後退に加え、GDPの80%水準に上る家計債務の高止まりから消費が低迷する見通し。


【台湾】
2015年度GDP成長率見通しを3.28%から1.56%に下方修正。中国などでのスマートフォン需要の鈍化などで、半導体など電子部品の輸出が落ち込む見通し。


商品

 原油、鉄鉱石、銅などの資源国に影響。

項目
資源国 ブラジル
ロシア
インドネシア
南アフリカ
オーストラリア

【ブラジル】
ブラジルの実質GDP成長率は1-3月期は1.6%減。設備投資など固定資本形成が7.8%減、製造業が7%減など投資が減少。インフラや失業率の上昇で家計消費が0.9%減となった。

政策金利は2015年1月の12.25%から8月までに14.25%と2%引き上げた。経済低迷は続くが、干ばつや通貨レアル安による輸入物価の上昇を背景にインフレが加速していることに対応する。ブラジルでは雨量の不足により農作物の育成が不調。野菜や果物が値上がりしている。また、米利上げ観測による米ドル高により通貨レアルが下落。輸入に依存する小麦粉など商品価格が上昇している。

なお、ブラジル政府は歳出減と歳入増を同時に進め、財政健全化を進める。2015年度の国家予算のうちインフラ整備や教育など約2.8兆円の執行を停止。一方、金融機関の利益に課税する社会負担金の税率を15%から20%に引き上げ、税収増を見込む。


【ロシア】
ロシアの2015年度の実質GDP成長率は3.2%減となる見通し。ロシアは原油生産量が世界2位で国家歳入の40%を石油関連収入が占める。2015年~2017年の財政均衡価格を100ドルと設定しており、原油価格の下落がロシア経済を圧迫している。

WTI原油先物は2015年6月末の約60ドルから2015年8月19日には約40ドルと約33.3%下落した。背景には中国など新興国の需要減少がある。商品市況の悪化が続けば、ロシア通貨ルーブル安が長期化する懸念がある。

また、ウクライナ問題に伴うロシアへの経済制裁で、米国はロシアのエネルギー企業への米国民との融資・金融取引の禁止や技術関連輸出を制限。EUは欧州投資銀行や欧州復興開発銀行が対ロシアの新規融資を停止。ロシア政府が50%超出資する金融機関が新規発行する債券・株式の購入を禁止するなどを行っている。