核酸医薬は抗体医薬に次ぐ新しい医薬品。病気の原因となる遺伝子の働きを抑えるのが特徴。製造に手間がかかる抗体医薬品に比べ、化学合成で安価に生産できる。副作用が少ないとされ、がんの治療薬などとして研究が進む見通し。

核酸医薬品は開発の歴史が浅く、多くは発展途上にある。2016年に承認された米バイオジェンの神経難病治療薬「スピンラザ」が2017年に8.8億ドル(約980億円)を売上、大型新薬が成功。開発が加速している。


核酸医薬関連銘柄の動き

コード 企業 内容
2802 味の素 核酸医薬品の開発・製造受託のジーンデザインを買収
4005 住友化学 ボナックの核酸医薬品の製造・販売に関する知的財産権で独占的実施権
ボナックに出資 出資比率は20%
3402 東レ 特発性肺線維症治療薬。2018年までの臨床試験開始
6988 日東電工 2015年3月から日本で核酸医薬の受託生産開始
肝硬変治療の新薬を2018年に製品化
がん治療向け核酸医薬品を開発。2017年の臨床試験を目指す
肺線維症治療薬。2018年に米国で臨床試験開始
難治性がん・希少がんを対象に大阪国際がんセンターと共同研究 2024年の臨床試験開始を目指す
4516 日本新薬 デュシェンヌ型筋ジストロフィー向けに2018年発売
4568 第一三共 デュシェンヌ型筋ジストロフィー向けに2020年に製造販売承認
4591 リボミック 2020年以降にアプタマー医薬品で一定のシェア
加齢黄斑変性治療薬を2018年8月に米国で治験を開始
7777 3DM 乳がんを対象とした核酸医薬の治験を開始
4571 ナノキャリア ミセル化ナノ粒子で核酸医薬品への展開
4563 アンジェスMG 「キメラデコイ」の基盤技術開発を完了。炎症性疾患の治療薬を開発へ
2018年2月に腰痛症に対する核酸医薬の初期治験を開始
アトピー性皮膚炎薬。2016年7月、臨床試験で統計学的な有意差が示されず
4114 日本触媒 TAKサーキュレーターの創薬を支援。実用化した核酸医薬の製造を受託
レナセラピューティクスの創薬を支援。薬の効果を高める技術を早期に実用化
- SBIバイオ 急性腎不全の治療薬を2018年7月に米国で治験開始 2021年の承認申請を視野


【味の素】
2016年12月9日、核酸医薬品の開発・製造受託のジーンデザインを買収すると発表。開発初期から後期・上市に至るまでのオリゴ核酸の受託開発・製造事業が可能な体制を構築する。


【住友化学】
2013年にボナックから核酸医薬品の製造・販売に関する知的財産権の独占的実施権を許諾。2016年7月にボナックの第三者割当増資を引き受け。2017年9月に出資比率を約20%に引き上げた。ボナックは、2010年に設立。日米欧で核酸医薬の関連特許を持つ。遺伝子に直接働きかけて病気の発症防止や治療をする技術が強み。肺線維症と呼ばれる疾病向けの薬で2022年頃をめどに実用化を目指している。
 

【東レ】
ボナックが創製した核酸医薬品「BNC-1021」の国内ライセンスを取得。2018年までの臨床試験開始を目指す。特発性肺線維症の治療薬として期待される。特発性肺線維症は呼吸困難を引き起こし、中間生存期間平均3年、5年生存率が20~40%の治療後の経過が悪い慢性難治性疾患。


【日東電工】
2015年3月から日本で核酸医薬の受託生産を開始。肝硬変の治療などに使う新薬の臨床研究も実施し、2018年度の製品化を目指している。2013年6月より米国で実施した健常者への投与で高い安全性を確認。2015年からは米国や欧州で一般患者への投与を開始。2015年6月より日本でも臨床試験を開始する。

また、がん治療向け核酸医薬品を開発。がん細胞を増殖させるリボ核酸の動きを止める「siRNA」と呼ぶ核酸医薬を独自開発。標的のがん細胞まで核酸医薬品を届ける膜も新たに開発したという。2017年度中の臨床試験を目指す。

さらに、肺線維症の根治が期待できる薬の候補である核酸医薬品の臨床試験を2018年に米国で始める。

2019年4月、大阪国際がんセンターと核酸医薬品の創薬を目的に共同研究部を設立。難治がん・希少がんの新規分子標的治療法及びがん免疫療法を担う核酸医薬品を開発。2024年の臨床試験開始を目指す。


【日本新薬】
デュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象に核酸医薬品を開発。初期段階の治療に目途。2018年の発売を目指す。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは世界的に新生男児の3500人に1人が発症するとされ、加齢と共に筋肉が萎縮して呼吸不全などに陥る病気。根本的な治療法がない。


【第一三共】
デュシェンヌ型筋ジストロフィーに使うバイオ医薬品を2020年に製造販売承認を取得する計画。


【リボミック】
リボミックは核酸医薬品に属するアプタマー医薬品を開発。アプタマー医薬は病気の要因となるタンパク質に結合し、その働きを阻害する。2004年12月に世界で初めて目の難病である加齢黄斑変性症薬「Macugen」が米FDAに承認され、ファイザーが発売。2013年の売上高は10億円程度とみられる。

また、開発を進めてきた核酸医薬「RBM007」の初期臨床試験を2018年8月に米国で開始。加齢黄斑変性の治療薬で、FGFという物質に付着して作用を邪魔し、血管新生と黄斑変性の両方を防ぐという。加齢黄斑変性の薬の市場は約1兆円となっている。

米BBC Researchによると、世界のアプタマー医薬市場は2012年の13億円から2017年に1700億円に拡大する見通し。リボミックは現在開発中のアプタマー医薬が世界的に承認され上市されれば、2020年以降に核酸医薬品市場の一定のシェアを獲得できるとしている。


【スリーディーマトリックス】
2015年7月7日、新規siRNA核酸製剤「TDM-812」を用いて乳がんを対象とした治験を開始。抵抗性乳がんで体表から触知できる局所腫瘤を有する患者が対象。TDM-812を皮下の腫瘤に局所投与した際の安全性評価を行う。

TDM-812にはスリーディーマトリックスの基盤技術の1つである界面活性剤ペプチドA6Kを使用。薬剤到達の課題解決が期待されている。


【ナノキャリア】
核酸デリバリーで特許査定。日米欧の主要マーケットで権利を確保できることになった。

核酸医薬品の全身投与において、核酸を狙った組織へ安定的に送達する技術「NanoFect」の1つ。核酸を強固に粒子内に担持。血中で分解されやすい核酸を安定的に保持したまま体内を滞留。標的の細胞に取り込まれた後、作用発現に適した位置でのみ内包された核酸を放出する。


【アンジェスMG】 
2016年7月、核酸医薬である「キメラデコイ」の基盤技術開発を完了。臨床研究を含む製品開発の段階に進む。ぜんそく、慢性関節リウマチ、変形性関節症、クローン病など炎症性疾患に対する治療薬の開発を目指す。

また、2018年2月、腰痛症に対する核酸医薬の初期治験を開始。椎間板で炎症を起こす物質がDNAから転写され、出てこないよう、転写を邪魔する核酸医薬を投与する。アンジェスは米国だけで少なくとも300億円の市場を狙えるとしている。

なお、アンジェスMGは、2015年3月に核酸医薬であるNF-κBデコイオリゴDNAを用いたアトピー性皮膚炎治療薬で日本において第Ⅲ相臨床試験を開始したと発表。2016年7月に統計的な有意差は示されなかったと発表した。


【日本触媒】
TAKサーキュレータと資本提携。TAKサーキュレーターは東京大学保有の技術を駆使した皮膚細胞叢のゲノム解析サービスを展開。炎症を抑える効果を持つ核酸医薬の創薬を進めている。日本触媒は、大阪府に新設される研究拠点と連携して創薬を支援。実用化した核酸医薬の製造も受託する。複数の核酸医薬を製品化し、売上高100億円規模を目指す。

また、東京医科歯科大発のバイオベンチャーであるレナセラピューティクスの株式3割を取得し資本提携。核酸医薬の創薬を支援。薬の効果を高める技術を早期に実用化し、国内外の製薬会社への技術供与を目指す。


【SBIバイオテック】
米子会社が2018年7月に急性腎不全の治療薬「QPI-1002」の治験を米国で開始。急性腎不全は心臓手術後に腎臓が急に機能を失うもので、手術を受けた患者の3~4割が発症し、2~5割が死亡する。対象は世界に数十万人いるという。2021年の承認申請を視野に入れる。

SBIバイオテックは、売上高1000億円超えのブロックバスターになると期待しているという。

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