米連邦準備理事会(FRB)は、2014年10月29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、米国債と住宅ローン担保証券(MBS)を買い取る資産購入プログラムを10月いっぱいで終了することを決めた。米国経済については「緩やかな回復が継続」。雇用は「著しい未活用が残る」も段階的に低減されつつあると判断。物価動向は「年2%の長期目標を下回る傾向が常態化する可能性が幾分低減した」とし、労働市場や物価安定を支えるのに十分な強さが米経済に備わったと判断した。

また、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利を事実上ゼロにする「ゼロ金利政策」は、資産購入プログラム終了後も「相当な期間」にわたり継続。雇用や物価など景気指標の回復が想定よりも早い場合は「利上げが早めに起きる」とする一方、回復が想定より遅い場合は「利上げが遅れる」と指摘した。

FOMCは2014年9月時点でメンバーによる中期政策金利の見通しを公表。2015年末には1.13%から1.38%に上がり、2016年も上昇傾向を示すとした。また、量的緩和で買い入れた米国債などの残高を維持した上で、まずは政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の引き上げを進める戦略原則も決めた。

なお、度重なる量的緩和で、FRBの資産規模は米経済規模の4分の1に相当する4.5兆ドル(約500兆円)に達している。

 

【米金融緩和縮小の推移】

項目 2013年 2014年
12月 1月 2月 4月 5月 7月 8月
資産購入総額 850億ドル 750億ドル 650億ドル 550億ドル 450億ドル 350億ドル 250億ドル
長期国債 450億ドル 400億ドル 350億ドル 300億ドル 250億ドル 200億ドル 150億ドル
MBS 400億ドル 350億ドル 300億ドル 250億ドル 200億ドル 150億ドル 100億ドル
2014年
9月 10月
150億ドル 0億ドル
100億ドル 0億ドル
50億ドル 0億ドル


【FF金利】

  2015年 2016年
FF金利 1.13%→1.38% 上昇傾向

 

FRBの予想指数と実績 

【予想指数】
2013年12月18日、FRBは中期経済見通しを発表し、2014年の米実質GDP成長率が2.8%~3.2%、失業率が6.3%~6.6%になるとした。また、2013年のインフレ率は0.9%~1.0%となる見通し。

  2013年 2014年 2015年
発表時 前回 12月 前回 12月 6月 前回
インフレ率 0.8~1.2% 0.9~1.0% 1.4~2.0% - - 1.6~2.0%
失業率 - - 6.5~6.8% 6.3~6.6% - 5.8~6.2%
成長率 - - 3.0~3.5% 2.8~3.2% 2.1%~2.3% 2.9~3.6%


【2014年 失業率と雇用統計推移】
2014年10月3日、米労働省は9月の雇用統計を発表し、非農業部門の雇用者数は24万8000人増えたと発表した。失業率は5.9%だった。食品・飲料などの小売りが堅調。情報や金融、レジャーなど内需関連も安定して伸び、消費増と雇用増が好循環した。 

  1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月
失業率 6.6% 6.7% 6.7% 6.3% 6.3% 6.1% 6.2% 6.1% 5.9%
非農業雇用者数 11.3万人 17.5万人 19.2万人 28.8万人 21.7万人 28.8万人 20.9万人 14.2万人 24.8万人


失業率を安定して下げる際の目安は非農業部門の雇用者数が月20万人水準で増加すること。2013年1~6月の新規雇用者数増の平均値は18.6万人と月20万人に近い水準で増加している。FRBは2014年の失業率見通しを6.5%~6.8%としている。 

【2013年 失業率と雇用統計推移】

  1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月
失業率 7.9% 7.7% 7.6% 7.5% 7.6% 7.6% 7.4% 7.3% 7.2%
非農業雇用者数 11.9万人 26.8万人 13.8万人 19.9万人 19.9万人 19.5万人 16.2万人 16.9万人 14.8万人
10月 11月 12月
7.3% 7.0% 6.7%
20.4万人 20.3万人 7.4万人


【GDP成長率】

  2013年 2014年
1-3月 4-6月 7-9月
米GDP 1.9% ▲0.1% 4.6% 3.5%

 

FRBの金融緩和出口戦略 

項目 内容
2013年 資産新規購入縮小・停止 毎月850億ドル購入している米国債・住宅ローン担保証券(MBS)の購入を段階的に縮小
2014年 FRBの資産規模の縮小 米国債・MBSの償還分を再投資せず、保有資産を縮小
市場売却を回避するなど市場に混乱を与えない対策を検討
2015年 ゼロ金利政策解除・利上げ 失業率6.5%への下落でゼロ金利を解除
政策金利の見直し


【13年 試算新規購入の縮小・廃止】
米国債と住宅ローン担保証券(MBS)の合計で毎月850億ドル(約8兆6000億円)を買い入れている資産購入プログラムを縮小する。購入額を段階的に減らし、最後にゼロにする。 

【14年 FRBの資産規模の縮小】
3兆ドルに膨らんだFRBの資産規模を縮小する。米国債・MBSを市場で直接売るのではなく、保有証券の償還を待ってなるべく市場に影響を与えないようにする。

【15年 ゼロ金利政策解除・利上げ】
政策金利を引き上げる。FRBは12年末、「インフレ率が2.5%を上回らない限りは、失業率が6.5%に下がるまでゼロ金利政策を続ける」と表明。FOMCによると、失業率が6.5%に下がるのは15年と予測されている。