FRBは、2015年12月16日、FOMCで短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0~0.25%から0.25~0.5%に引き上げることを決め、大規模緩和からの出口に動いた。2014年10月の資産購入プログラム終了から政策金利の引き上げまでの主な要点をまとめた。
FRBの出口戦略
FRBは、2013年に米国債と住宅ローン担保証券(MBS)の合計で毎月850億ドル(約8兆6000億円)を買い入れている資産購入プログラムを縮小・停止。2014年に3兆ドルに膨らんだFRBの資産規模の縮小を開始。2015年に失業率6.5%への下落でゼロ金利の引き上げを計画していた。
年 | 項目 | 内容 |
2013年 | 資産新規購入縮小・停止 | 毎月850億ドル購入している米国債・住宅ローン担保証券(MBS)の購入を段階的に縮小 |
2014年 | FRBの資産規模の縮小 | 米国債・MBSの償還分を再投資せず、保有資産を縮小 |
市場売却を回避するなど市場に混乱を与えない対策を検討 | ||
2015年 | ゼロ金利政策解除・利上げ | 失業率6.5%への下落でゼロ金利を解除 |
政策金利の見直し |
資産購入プログラムを終了
2014年10月に終了。米国経済は「緩やかな回復が継続」。雇用は「著しい未活用が残る」も段階的に低減されつつあると判断。物価動向は「年2%の長期目標が下回る傾向が常態化する可能性が幾分低減した」とし、労働市場や物価安定を支えるのに十分な強さが米経済に備わったと判断した。
項目 | 2013年 | 2014年 | |||||
12月 | 1月 | 2月 | 4月 | 5月 | 7月 | 8月 | |
資産購入総額 | 850億ドル | 750億ドル | 650億ドル | 550億ドル | 450億ドル | 350億ドル | 250億ドル |
長期国債 | 450億ドル | 400億ドル | 350億ドル | 300億ドル | 250億ドル | 200億ドル | 150億ドル |
MBS | 400億ドル | 350億ドル | 300億ドル | 250億ドル | 200億ドル | 150億ドル | 100億ドル |
2014年 | |
9月 | 10月 |
150億ドル | 0億ドル |
100億ドル | 0億ドル |
50億ドル | 0億ドル |
資産規模の縮小
FRBが保有する長期国債や住宅ローン担保証券(MBS)などは4兆5000億ドル(約540兆円)となっている。
2014年に米国債やMBSの償還分を再投資せず、保有資産を縮小する計画だったが、FRBは満期を迎えても、同額分を再投資している。
利上げまでの推移
FRBは2015年に政策金利の引き上げを計画。2012年末に「インフレ率が2.5%を上回らない限りは、失業率が6.5%に下がるまでゼロ金利政策を続ける」としていた。また、2014年10月の資産購入プログラム終了時、政策金利は資産購入プログラム終了後も「相当な期間」にわたり継続。「1.5%であるインフレ率がFOMCが目指す2%程度の長期インフレ目標に到達できるめどが立つことが、ゼロ金利解除の大前提」。雇用や物価など景気指標の回復が想定より早い場合は「利上げが早めに起きる」、遅い場合は「利上げが遅れる」とした。
2015年1月、安定した米景気の回復を踏まえ、ゼロ金利を「相当な期間維持する」との一節を削除。「国際情勢にも留意する」との文言を加えた。6月には、2015年後半から米経済成長が上向くとの見通しを示した上で、利上げは「年内が適切」とした。7月には、労働市場がさらにいくらか改善した上で、物価が上昇するという合理的な確信が得られれば動くとした。10月には、次回のFOMCで利上げが適切か見極めるとした。12月、政策金利を0~0.25%から0.25~0.5%に引き上げた。
年月 | 内容 | |||
2014年 | 10月 | 忍耐強くなれる | 相当な期間維持する | - |
2015年 | 1月 | 削除 | 国際情勢にも留意する | |
3月 | 削除 | - | - | |
6月 | 年内が適切 | |||
7月 | 年内が適切 | 労働市場の更なる改善 | 物価上昇の確信 | |
10月 | 次回のFOMCで見極め | |||
12月 | 0.25%引き上げ |
米国の主な指標推移
【FRBの予想推移】
項目 | 2014年 | 2015年 |
インフレ率 | 1.4~2% | 1.6~2%→1.3~1.4% |
失業率 | 6.5~6.8%→6.3~6.6% | 5.8~6.2% |
経済成長率 | 3~3.5%→2.8~3.2%→2.1~2.3% | 2.6~3%→2.3~2.7% |
【経済成長率】
2015年 | 1-3月 | 4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 2015年(予) |
経済成長率 | 0.2% | 3.7% | 2.1% | 3%前後 | |
個人消費 | 1.9% | 3.1% | 3% | ||
設備投資 | ▲3.4% | 3.2% | 2.4% | ||
住宅投資 | 1.3% | 7.8% | 7.3% | ||
2014年 | 1-3月 | 4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 2014年 |
経済成長率 | ▲0.1% | 4% | 5% | 2.2% | 2.4% |
個人消費 | 3% | 2.5% | 3.2% | 4.2% | - |
設備投資 | ▲2.1% | 5.5% | 8.9% | 4.1% | - |
住宅投資 | ▲5.7% | 7.5% | 3.2% | 1.9% | - |
【雇用統計】
失業率を安定して下げる際の目安は、非農業部門の雇用者数が月20万人水準で増加することとしている。
項目 | 年 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
失業率(%) | 2015 | 5.7 | 5.5 | 5.5 | 5.4 | 5.5 | 5.3 | 5.3 | 5.1 | 5.1 | 5.0 | 5.0 | 5.0 |
2014 | 6.6 | 6.7 | 6.7 | 6.3 | 6.3 | 6.1 | 6.2 | 6.1 | 5.9 | 5.8 | 5.8 | 5.6 | |
非農業雇用者数(万人) | 2015 | 25.7 | 29.5 | 12.6 | 22.3 | 28 | 22.3 | 24.5 | 17.3 | 13.7 | 27.1 | 21.1 | 29.2 |
2014 | 11.3 | 17.5 | 19.2 | 22.8 | 21.7 | 28.8 | 20.9 | 14.2 | 24.8 | 21.4 | 42.3 | 32.9 |