iPS細胞関連銘柄の動き。2017年は理化学研究所などによる他人のiPS細胞から育てた細胞を加齢黄斑変性患者に移植する臨床研究や脊髄損傷患者への移植、心筋シートなどの移植が行われることから、注目される年になりそうだ。

2017年に計画されている主な企業の動きをまとめた。


2017年のiPS細胞関連企業の動き

コード 企業 主な動き
4901 富士フイルムHD 網膜色素上皮細胞を作り加齢黄斑変性に使う治療 2017年
7731 ニコン 細胞受託生産 2017年
  iPS細胞培養装置 2017年
6340 澁谷工業
6323 ローツェ 2016年3月にiPS細胞などの自動培養装置の販売開始。2018年に100台 16年~18年
  大日本住友 iPS細胞から作った網膜細胞をそのまま入れた注射剤。サンプル生産開始 2017年
4506 iPS細胞を培養する専用施設を稼働 2017年
  網膜細胞シートの治験開始 2017年以降
4593 ヘリオス


【富士フイルムホールディングス】
2017年に子会社の米CDIを通じて、iPS細胞から網膜色素上皮細胞を作り、加齢黄斑変性に使う治験を始める計画。米国立衛生研究所(NIH)の助成を受ける。

CDIは、iPS細胞の開発・製造を行い、良質なiPS細胞を大量に安定生産する技術に強みを持つ。心筋や神経、肝臓など12種類の高品質なiPS細胞を大手製薬企業や先端研究機関などに安定供給。創薬支援や細胞治療、幹細胞バンク向けのiPS細胞の開発・製造を行っている。


【ニコン】
2017年には細胞培養受託開始やiPS細胞培養装置を実用化する見通し。

細胞培養受託では、2015年に再生医療向け細胞生産で世界最大手のLonzaと細胞受託生産で提携。2015年上期に受託生産を開始し、2017年秋に東京都内で細胞培養施設を稼働させる。ニコンはLonzaの持つ生産システムや特許の供与、コンサルティングサービスを受ける。体性幹細胞などの細胞生産ノウハウの基礎を習得し、将来のiPS細胞の再生医療の実用化に向けた取組を加速させる。

iPS細胞培養装置では、澁谷工業と理化学研究所と共同開発。2017年をめどに病気や事故で傷ついたところに移植する細胞シートの量産技術の確立を目指す。


【澁谷工業】
iPS細胞培養装置をニコンと理化学研究所と共同開発。2017年をめどに病気や事故で傷ついたところに移植する細胞シートの量産技術確立を目指す。


【ローツェ】
iPS細胞などの自動培養装置「セルキーパー」を開発。作業者が日夜・休日を問わず手作業で行っていた培地交換を自動化する。販売開始は2013年3月。価格は1480万円から。2016年は10台、2018年には100台の販売を計画する。


【大日本住友製薬】
理化学研究所と連携し、他人のiPS細胞から作った網膜細胞をそのまま入れた注射剤の開発に取り組むもよう。2017年にもサンプルの注射剤の生産を始め、臨床研究を進める。2020年にも医薬品として日本での承認取得を目指す。対象疾患は目の難病である「加齢黄斑変性」で、現在の細胞シートでは細胞採取から移植まで10ヶ月程度かかるが、注射剤は移植準備から施術までの期間を大幅に短縮でき、費用の削減が見込めるという。

また、2017年にiPS細胞由来の治療薬開発で同細胞を培養する専用施設を稼働させる。健康な人から採取した細胞から作ったiPS細胞を使い、加齢黄斑変性とパーキンソン病の治療薬開発を進める。


【ヘリオス】
大日本住友製薬と網膜細胞シートを共同開発。2017年から第Ⅰ相/第Ⅱ相試験に相当する臨床試験を数十例程度の規模で開始する予定も、計画見直しで治験開始が遅れる見込み。計画では治験開始後、約3年後の承認申請を目指している。