原油価格の急落に伴い産油国の財政が悪化している。2014年夏からの原油相場下落は、石油輸出国機構(OPEC)やシェールといった供給面の要因がきっかけだった。現在は、中国の景気減速に伴う資源需要減速懸念やイランの経済制裁解除に伴う増産の影響も意識されている。

OPECは、2015年12月4日、目標を上回る現状の原油生産の継続を容認し、日量3000万バレルの生産目標の明示を取りやめ。2016年6月の総会までは具体的な目標を設けず、市場での値動きなどを見守る立場となっている。

そこで産油国であるサウジアラビアの動きを分析するため、サウジアラビアの財政計画や原油の財政収支均衡水準など、原油関連情報をまとめた。

項目 内容
OPEC 2016年6月まで具体的な目標を設置しない


サウジアラビアの財政

サウジアラビアは、2015年12月28日、2016年予算を発表。財政収支は2015年が3670億リヤルの赤字、2016年は3262億リヤル(約10兆5000億円)の赤字となる見通しを示した。サウジアラビアの準備資産残高は2015年11月時点で2兆3832億リヤル。

サウジアラビアの財務省は、民政分野での補助金を削減する方針。向こう5年間で水道や電気料金などを段階的に見直し。歳入面では手数料と罰金水準を見直し。たばこや清涼飲料水を値上げの対象に挙げた。

なお、国際通貨基金(IMF)は、サウジアラビアの準備資産が「5年以内に尽きる」と警告。補助金などの改革を促した。


【予算推移】

  2015年 2016年
歳入 6080億リヤル 5138億リヤル
歳出 9750億リヤル 8400億リヤル
財政収支 ▲3670億リヤル ▲3262億リヤル


【準備資産推移】

  2015年8月 2015年11月
準備資産残高 2兆5000億リヤル 2兆3832億リヤル


サウジアラビアの収支を均衡させる原油価格

IMFはサウジアラビアの財政収支を均衡させる原油価格を1バレル86ドルと推計。経常収支を均衡させる原油価格は63.5ドルとしている。

  財政収支均衡 経常収支均衡
サウジアラビア 86ドル 63.5ドル


原油産油国の財政収支均衡

  財政収支均衡 経常収支均衡
UAE 79ドル 64.2ドル
カタール 54ドル 55.9ドル
クウェート 54ドル 32.9ドル


参考

・ベネズエラ
原油価格均衡が130億ドル以上と試算されている。ベネズエラは輸出の96%を石油に依存。原油価格1ドル下落で7億ドル(約840億円)の損失が発生するもよう。

・ロシア
2015年の予算は50ドルを想定。82ドルにならなければ予算は均衡しない。