ロシアは原油生産量が世界2位で国家歳入の40%を石油関連収入が占める。2015年~2017年の財政均衡価格を100ドルと設定しており、原油価格の下落がロシア経済を圧迫している。
WTI原油先物は2015年6月末の約60ドルから2015年8月7日に43.87ドルと約26.8%下落した。背景には中国など新興国の需要減少がある。商品市況の悪化が続けば、ロシア通貨ルーブル安が長期化する懸念がある。
また、ウクライナ問題に伴うロシアへの経済制裁で、米国はロシアのエネルギー企業への米国民との融資・金融取引の禁止や技術関連輸出を制限。EUは欧州投資銀行や欧州復興開発銀行が対ロシアの新規融資を停止。ロシア政府が50%超出資する金融機関が新規発行する債券・株式の購入を禁止するなどを行っている。
ロシアのGDP推移
2013年 | 2014年 | 2015年(予) | |
ロシアのGDP | 1.3% | 0.6% | ▲3.2% |
原油
ロシアは原油生産量が世界2位で国家歳入の40%を石油関連収入が占める。2015年~2017年の財政均衡価格を100ドルと設定している。原油価格が1ドル変動で700億ルーブル(約1800億円)の歳出入変動があるとの試算がある。ロシア中銀は原油価格が1バレル60ドルなら、2015年の成長率は4.5%減に落ち込むとしている。
項目 | 内容 |
原油 | 国家歳入の40%が石油関連収入 |
2015年~2017年の財政均衡価格を100ドルに設定 | |
原油価格1ドル変動で700億ルーブル(約1800億円)の歳出入変動 |
金融政策
【政策金利】
ロシア中銀は「今後もインフレリスクが高まる場合、金利の引き上げを続ける」とし、物価上昇率が目標である4%に下がるまで、長期的に金融引き締めを続ける方針。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
2015年 | 15 | - | 14 | 12.5 | - | 11.5 | 11 | - | 11 | 11 | ||
2014年 | 5.5 | - | 7 | 7.5 | - | - | 8 | - | 8 | 9.5 | - | 17 |
【通貨ルーブル】
2014年11月10日、通貨ルーブルの変動幅を設定し市場介入を行う通貨バスケット制度を廃止し、市場で相場が決まる変動相場制に移行することを決定。ルーブルに対する投機的な動きの前提条件が形成されることを防ぐ。一方、ナビウリナ中銀総裁は、必要な額の為替介入をいつでも実施する用意があるとも表明している。
4兆円の経済対策
ロシア政府は、2015年1月28日、約2兆3300億ルーブル(約4兆円)規模の経済対策を行うと発表。国際発行による1兆ルーブルなどを銀行に注入して、通貨ルーブルの急落や欧米からの金融取引制限の影響をうける金融機関の経営安定化に努める。地方政府に対する財政支援や物価上昇に伴う年金増額、失業対策にも資金を確保する。
また、2015年予算で約15兆5000億ルーブル(約26兆円)を見込む歳出を10%削減。新たな地域開発の延期などで歳出を抑える。歳出抑制には国防関連や年金、保証分野は対象外。2016年から2018年にも最低5%の歳出削減を行い、2017年までに財政均衡化を目指す。
項目 | 内容 | |
経済対策 | 4兆円規模 歳出10%削減 | |
効果 | ルーブル 金融機関経営の安定化 | |
歳出削減 | 対象 | 新たな地域開発延期 |
対象外 | 国防関連 年金 社会保障分野 | |
目標 | 2017年までに財政均衡化 |
ウクライナ問題 ロシアへの経済制裁
米国はロシアのエネルギー企業への米国民との融資・金融取引禁止や技術関連輸出を制限。銀行への米国民との融資・金融取引を禁止。防衛企業5社の米国企業・個人との取引を禁止した。
EUは欧州投資銀行や欧州復興開発銀行が対ロシア新規融資を停止。ロシア政府が50%超出資する金融機関が新規発行する債券・株式の購入を禁止。ロシアとの新規武器売買契約や油田開発などに関する技術供与を禁止。国営エネルギーや防衛企業6社に融資も規制した。
なお、ロシアの金融機関は2013年の約160億ユーロ(約2兆2000億円)の資金調達額のうち、半分近くをEUの金融機関に依存している。
国 | 2014年 | 制裁内容 | 対象 |
米国 | 7月16日 | 米国民との金融取引禁止 | ロスネフチ、ノバテク、ガスプロムバンク、対外経済銀行 |
7月29日 | 米国民との金融取引禁止 | VTB、モスクワ銀行、ロシア農業銀行 | |
技術関連輸出を制限 | エネルギー企業 | ||
9月12日 | 技術・サービスの提供禁止 | ガスプロム、ロスネフチ、ガスプロムネフチ、スルグートネフチガス、トランスネフチ | |
米金融市場で資金調達禁止 | ズベルバンク | ||
米企業・個人と取引禁止 | UACなど国営防衛企業5社 | ||
EU | 7月17日 | EIBが新規融資を停止 | - |
7月29日 | 債券・株式購入禁止 | ロシア政府が50%超出資する金融機関 | |
技術供与禁止 | ロシアとの新規武器売買・油田開発 | ||
9月12日 | 融資禁止 | ロスネフチ、トランスネフチ、ガスプロムネフチ、UACなど6社 |
【ロシア企業 ロシア政府への支援要請額】
欧米の制裁によって容易に資金調達出来なくなった企業がロシア政府に資金支援を要請している。ロシア国営会社ロスネフチは原油収入を積み立てた国民福祉基金(総額860億ドル)を活用し、約420億ドル(約4兆3000億円)規模の社債を購入するよう政府に求めた。ロシア農業銀行は28億ドル(約2900億円)、対外経済銀行は14~17億ドルを要請した。国民福祉基金の大半は既に大規模インフラ事業などへの支出が決まっており、新たに巨額の資金を捻出するのは困難とみられる。
なお、ロシア企業の対外債務は6500億ドル(約67兆円)規模に達するとの試算がある。3100億ドルは国営銀行・企業のもので、800億ドルは2015年までに返済企業を迎えるという。ロシア中央銀行の外貨準備は4700億ドル。
企業 | 金額 |
ロスネフチ | 420億ドル |
ロシア農業銀行 | 28億ドル |
対外経済銀行 | 17億ドル |
【ロシア中央銀行】
2014年12月24日、欧米の対ロ制裁で外貨資金の調達が困難なロシア企業にドル資金やユーロ資金を供給して対外債務の借り換えを支援する方針を表明。