シェールガスとは、頁岩(けつがん)と呼ばれる硬い岩盤のごく小さな隙間に閉じ込められている天然ガスや石油のこと。米国では地下2000~3000メートルの部分から採掘される。 ここから長い年月をかけて漏れたガスや石油がもっと浅いところにたまってできたのが従来のガス田や油田。シェールはその源になるもの。 シェール層の開発によって、地中から取り出せるガスや石油の量が格段に増え、将来のエネルギー不足の懸念が急速に後退している。 【米国 世界最大の産油国へ】 シェールガスの開発によって米国は近くガスの国内自給を達成する見通し。2017年には世界最大の産油国となるとされている。 このことにより中東などからガスや石油を輸入する必要が減ることが見込まれている。 【ドル高の要因】 またシェールガスの開発は、潜在的なドル売り要因となっている原油貿易の赤字が縮小することが見込まれることから、ドルが長期的な上昇トレンドに入るとの見方がある。 2011年、米国の経常収支は4659億ドルの赤字。貿易収支はガス・原油の赤字額が3370億ドルとなっており、大きな割合を占める。 シェールガスの開発で、米経常赤字の対GDP比は2020年に2.4ポイント下がるとの見通しもあり、12年の水準から計算すると経常赤字が約6割減ることが見込まれる。米国の自給率が上がり、ガス・石油の赤字が解消すると経常収支は大幅に改善する。 また、国際エネルギー機関(IEA)では「北米は30年に石油の純輸出に転じる」と予想されていることから、石油取引の赤字が減少していくことが見込まれ、需給面からドルの売り圧力が弱まることが予想される。 {天然ガス火力発電比率上昇 石炭火力発電比率低下} 天然ガス価格の下落で天然ガス火力発電の比率が高まり、石炭を利用する石炭火力発電の比率が低下している。 そのことから、今後、150億ドル規模の天然ガス火力発電投資が計画されており、シーメンス、アルストム、三菱重工業が米国に発電用ガスタービン工場を新設している。 {エタン原料のエチレン生産増 ナフサ原料のエチレン生産減} シェールガスに随伴して生産されるエタンを原料とする米国の石油化学のコスト競争力が向上しており、エクソン、ダウ、シェルなどが全米のエチレン生産能力の約3割に相当するエタンクラッカーの新設を計画している。 これらのエチレン生産設備が稼動をはじめる2017年頃には、日本の主なエチレン輸出先である中国市場に安価な米国産エチレンが流入し、日本の石油化学産業が打撃を受ける可能性がある。 一方、エタンを原料とするエチレンの生産が増加することで、従来のナフサ分解で得られていた石油製品の不足が懸念されている。自動車用タイヤが主要用途であるブタジエンは特に世界的な需要逼迫が予想されている。ブタジエン代替製造技術で先行する日本の化学メーカーの事業機会が拡大している。 一方、エタン由来のエチレン生産が増加することで、従来のナフサ分解で得られていた石油製品の不足が懸念される。自動車よタイヤが主要用途であるブタジエンは特に世界的な需給逼迫が予想され、ブタジエン代替製造技術で先行する日本の化学メーカーの事業機会は拡大している。 【[投資関連情報へ[2066]]】