水素燃料は石油から化学品を生産する工程で取り出すためコストが高い。現在、1立方メートルあたり約120円とされている。川崎重工業は2017年から豪州より輸入を開始し60円に、千代田化工は川崎市に大型供給基地を建設し80円に、JX日鉱日石エネルギーは水素をトルエンに溶かして液体化し、トレーラーで運ぶ技術を開発し100円以下にする目標。また、水素ステーションの整備や水素の生産量の増加でさらにコストを下げ、ガソリン並の60円に近づける方針。


水素燃料 各社の取組

企業 取組 水素価格
川崎重工業 オーストラリアから輸入 60円
千代田化工建設 産油国から輸入 80円
JX日鉱日石 水素を液化する技術を開発 100円→60円
豊田通商 バイオガスから水素を製造 -
三菱化工機


【川崎重工業】
 液化した水素を運ぶ船舶を製造。600億円を投じ、2500立方メートルの水素を運べる小型船2隻を製造。2017年からオーストラリアから輸入を開始する。また、2030年までに16万立方メートルの水素を運べる大型船を製造。燃料電池車の年間300万台分の供給量を確保する計画。輸入価格は1立方メートルあたり29.8円で、国内流通コストを上乗せすると約60円になるもよう。


【千代田化工建設】
2017年度に川崎市で水素燃料の大型供給基地を建設。投資額は300億円。供給量は年6億立方メートル。産油国で原油採掘時に出る水素を液化して船で輸入し、首都圏の水素ステーションを中心に圧縮・液化して専用車で配送する。水素価格は約80円に下げられる見通し。天然ガスを産出する際に水素と二酸化炭素を分離する技術を開発。2018年までに実証試験に入り、2020年頃実用化する計画。


【JX日鉱日石エネルギー】
水素をトルエンに溶かして液体化し、常温・常圧の状態でトレーラーで水素ステーションに運ぶ技術を開発。車に充塡する時点で、独自開発した触媒で気体に戻す。現在は、気体の水素を高圧で圧縮し、トレーラーで輸送しているが、液化すれば高強度の炭素繊維製ボンベや爆発を防ぐ設備などが不要になり、水素ステーションの建設費は2億円と現在より半減する見通し。水素生産・流通コストは100円以下が実現できるもよう。さらに、水素ステーションの整備や水素の生産量の増加でコストを引き下げ、ガソリン並の60円に近づける計画。2020年をめどに供給網の整備を始める。


【豊田通商・三菱化工機・九州大学】
下水処理の過程で発生するバイオガスから水素を製造。燃料電池車へ供給する施設を整備し、実証実験に取り組む。水素を製造できる下水汚泥消化ガスの発生能力がある下水処理場は日本全国に約300ヶ所ある。