フィンテックとは、金融とITを組み合わせた新しい金融サービスの一種。ブロックチェーンと呼ばれる金融技術の実用化・高度化が進んでいる。フィンテックへの投資額は2020年に2015年の4倍の5兆円を超えるとの試算もある。米国のフィンテックへの投資額は2014年に1兆2000億円と前年の3倍となった。

項目 内容
投資額 2020年に5兆円を超える
米国で2014年に1兆2000億円


ブロックチェーン

金融機関による資金移動は、直接送金は行われず、情報のやりとりで成立している。A銀行からB銀行に送金する場合、A銀行は中央銀行にあるA銀行の口座から、中央銀行内のB銀行の口座に振替を指示。振替完了後、B銀行は中央銀行から通知を受け取る。このように、中央銀行のような絶対的に信用できる存在を間に挟む仕組みとなっている。

確実に資金を移動できる一方、中央銀行などが膨大な量の注文や指示を処理するためには、巨大なコンピューターシステムの維持が必要で、巨額のコストが発生。手数料が割高になる。

ブロックチェーンによる資金移動は、ネット上の参加者それぞれに信用を求める。専用のソフトウエアをダウンロードした企業や個人が相互につながり合い、巨大なネットワークを構築。送金が行われる場合、ネットワーク参加者全てに取引を通知。参加者全員が承認することで、情報が送られたことを確認する。構造的に1ヶ所のデータを改ざんしても不正はできないため、データの信頼性が極めて高いという。

個人間の端末で直接送金ができるため、コストや時間が削減される。一方、仮想通貨の価格変動が大きいことや政府の規制が及びにくく、取引が保護されていない。

また、取引データの正誤確認といった計算処理は外部の不特定多数の利用者に委託。これらの多くは中国に偏在しているといわれ、システム維持の上でリスクにもなり得る。金融大手などはこうした懸念を提携ネットワークの中で完結させる半閉鎖的なモデルをつくることで解消しようとしている。

  送金 メリット デメリット
金融機関 A銀行→中央銀行→B銀行 確実に資金移動 時間がかかる
コスト高
ブロックチェーン A→ネットワークによる承認→B 時間がかからない 仮想通貨の価格変動が大きい
コスト安 規制が及びにくく取引が保護されない


【海外大手金融機関の動き】
米取引所ナスダックは、2015年12月30日、ブロックチェーンを使ったデータベースをまず未公開株式市場の取引決済に導入した。取引成立から決済までの期間を従来の3日から10分に短縮。仲介機関への手数料や管理費を削減する。今後、証券管理や生産、議決権管理などの業務にも応用する計画。株式の高速取引など瞬間的な処理には向かないが、取引などの一般的な記録業務全般にほ有効としている。ブロックチェーン技術は取引に関わる多数の参加者が相互にデータを検証するため、技術的な信頼性が高く、取引所に頼らなくても正確なデータの決済が可能になる。取引所側は中抜きにされる可能性があり、自前での開発を進める。

英バークレイズは、2015年10月、貿易手続きの記録管理をブロックチェーン技術を使って電子化する米ベンチャー・ウェイブと契約。米シティグループは、自社で運営する送金や決済へ応用するため、研究開発を進めている。

企業 取組
米取引所ナスダック 未公開株式市場の取引決済に導入
英バークレイズ 貿易手続きの記録管理
米シティーグループ 送金や決済への応用のため研究開発


【ブロックチェーンでの影響が大きい分野】 

項目 内容
金融 証券関連の記録や管理
遺産や遺言の信託
貿易保険
決済
送金
クラウドファンディング
マイクロファイナンス
不動産 入金確認
建築の許認可
物件の登記などのデータ管理
行政 戸籍
パスポート
投票権
法人登記などのデータ管理
運輸 配送や輸送手続きの記録
免許
車両などのデータ管理


フィンテック 主な関連事業

 【クラウドファンディング】
ウェブサイトやSNSを通じて、消費者でもある個人に広くビジネスモデルを説明し、資金を募る。


【トランザクションレンディング】
EC(電子商取引)事業者が自社のショッピングサイトに出店している企業に融資をするサービス。前日や前月の店の売上や顧客評価などから店の信用力を測り、融資限度額や利率を提示する。


【クラウド財務管理】
個人が管理する銀行やカード情報を取り込み、一元管理。支出のデータを見ながら貯蓄方法のアドバイスや保険サービスなどを提示したりする。


【決済ツール】
カード決済機能が付いたリンクを自社サイトに設置するだけでオンライン決済機能を導入できるサービスや指紋決済サービスなど。


【テレマティクス保険】
自動車運転時の急加速や急減速の回数、GPSを使った走行距離の計測、高速道路などの利用状況、ハンドル操作、乗車時間などのデータで保険料を決める。


仮想通貨取引所への規制案

金融庁の仮想通貨の法規制素案。取引所の事業者を資本規制や外部監査の対象とり、利用者保護につなげる方針。2016年の通常国会に関連法案を提出する見通し。

仮想通貨の取引所は登録制にし、金融庁が監督官庁となる。登録した事業者は、資金洗浄を防ぐ観点から、警察庁が所管する犯罪収益移転防止法の対象に追加。口座開設時の顧客の本人確認や取引記録の作成・保存、疑わしい取引の届け出を義務化。最低資本金などの財務規制や財務書類の公認会計士による外部監査、破綻に備えて自己資産と顧客資産の分別管理を義務化。金融庁による検査や業務改善、停止命令の対象となる。

項目 内容
規制案 登録制
金融庁が監督官庁
口座開設時の顧客の本人確認
取引記録の作成・保存
疑わしい取引の届け出
最低資本金の設定
財務書類の外部監査
自己資産と顧客資産の分別管理
金融庁による検査や業務改善、停止命令の対象