2014年11月に日本で医薬品医療機器法が施行。再生医療薬が国の承認を得られるまでにかかる期間が約7年から2~3年に短縮され、世界で最も早く実用化できるようになった。日本で再生医療向けの薬を開発する動きが活発化し、再生医療の世界的な研究開発拠点になる可能性がある。

薬の有効性については承認までの症例数などの基準を緩和する代わりに、投与した全ての患者を追跡調査。効き目や副作用の確認を続けることを条件に早期の市販を認めた。


再生医療薬開発の企業一覧

企業 内容
日本企業 田辺三菱製薬 韓国KLSから変形性膝関節症治療向け細胞治療薬で日本での販売権を取得
大日本住友製薬 米で脳梗塞治療薬 2020年の販売を計画
サンバイオ
中外製薬 虚血性脳梗塞 16年から開発
テルモ 心不全患者向け心筋シート
J-TEC 皮膚・軟骨・角膜上皮
JCRファーマ 免疫不全治療に使う細胞医薬品
大日本住友製薬 iPS細胞由来のシートで眼病治療
ロート製薬 幹細胞で内臓疾患治療向け細胞医薬品
カネカ 急性移植片対宿主病とクローン病 22年に承認取得
ニプロ 脳梗塞 18年に生産開始
幹細胞で脊髄損傷治療
海外企業 イスラエルのプルリステム 足の血流障害治療薬 15年に治験
英リニューロン 脳梗塞の治療薬 15年に治験
韓国メディポスト 関節軟骨の損傷治療薬


【田辺三菱製薬】
韓国KLSから変形性膝関節症の症状改善を目的とした細胞治療薬「Invossa」で日本における独占的開発・販売権を取得。


【大日本住友製薬 サンバイオ】
脳梗塞の新型治療薬を米国で共同開発するもよう。健康な人から採取した細胞を使う細胞医薬。脳への投与で脳細胞を再生させ、運動や認知、言語の機能改善効果が期待される。米国で150人の患者を対象に臨床試験を開始。2018年から最終治験を実施し、2020年の販売を目指す。米国では脳梗塞による後遺症に悩む患者が680万人いるとされる。
 

【中外製薬】
2015年3月2日、米アサーシスと虚血性脳梗塞に関する再生医薬品の日本国内の開発・販売で独占的なライセンスを締結。投資額は約240億円。早ければ2016年から開発を始める。虚血性脳梗塞の世界患者数は1500万人以上。
 

【テルモ】
心筋の再生医療について2007年より細胞シートの開発に着手。2012年から治験を開始。2014年に完了。2014年10月に虚血性心疾患による重症心不全を対象とした骨格筋芽細胞シートを再生医療等製品として製造販売承認を申請。2015年9月2日に製造販売承認を了承。承認期間は5年間という条件付きで、この間に使用患者の情報を基に有効性を判断する。
 

【J-TEC(ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング)】
やけど治療向け自家培養表皮「ジェイス」はやけどを負った患者から正常な皮膚を採取し培養、移植する。将来的な国内売上高を30億円と見込む。軟骨欠損治療向け「ジャック」は患者から正常な軟骨を採取。4週間培養し軟骨を作製する。将来的な国内売上高は数百億円と見込む。
 

【JCRファーマ】
人の細胞を培養し免疫不全などの治療に使う「細胞医薬品」の生産に乗り出す。健常者の骨髄液に含まれる幹細胞の一種を医薬品として使用。移植手術の際に起きる重い拒絶反応を抑える効果が期待できるという。2014年夏に厚生労働省に製造販売認証を申請。2015年9月2日に製造販売承認を了承。2016年はじめにも販売できる見通し。約5億円を投資し、年500~600人分の生産体制を整備。市場規模は年数十億円とみられる。


【ロート製薬】
様々な細胞になる「間葉系幹細胞」を人の脂肪から抽出して培養する細胞医薬品を研究。内臓疾患などの治療向けに実用化する。2019年の販売を目指す。


【カネカ】
2014年9月10日、国立循環器病研究センターと共同で再生・細胞関連事業を開始。羊膜由来間葉系幹細胞を使用し、急性移植片対宿主病とクローン病を対象とした治験を実施。2022年に細胞製剤の製造・販売承認を取得。2037年に1000億円規模の事業を目指す。


【二プロ】
2014年4月28日、札幌医科大学の「脳梗塞及び脊髄損傷の治療に用いる自己骨髄間葉系幹細胞」の特許について、再生医薬品の製造販売を行うことを目的にライセンス契約を締結した。10~20億円投資し、2015年~2018年に工場を建設。2018年にも細胞製剤の生産を始める計画。