iPS細胞関連で、2015年に実施される見通しの臨床研究や企業の動きをまとめた。


パーキンソン病

京都大学iPS細胞研究所は、iPS細胞を使ったパーキンソン病の医療研究で、臨床研究を2016年に開始する見通し。2014年6月に安全性審査を開始。2015年1月頃から京都大学が設置予定の第三者委員会による審査が開始。厚生労働省の審査を経て、2015年夏に臨床研究に着手。2016年に移植手術が実施される見通し。

パーキンソン病は、脳の「黒質」という部分で、神経伝達物質のドーパミンを放出する神経細胞が減少することで発症。手足の震えや歩行障害などの症状が出る。患者の血液からiPS細胞を作製し、大量の神経細胞に成長させて患者の脳に移植。脳内で減っているドーパミンの量を増やす。移植後、1年間は経過を観察し、安全性を確認する。
 

2015年 内容
1月頃 京都大学の第三者委員会による審査開始
臨床研究に着手


【関連銘柄】
アイロムホールディングスは、2014年11月にセンダイウイルスベクターを用いて臨床用iPS細胞作製用ベクターの発売を目指した製造を開始。2015年夏頃発売を見込む。センダイウイルスベクターとは治療用の遺伝子を特定の臓器・組織に運搬し、効果的に標的細胞内にどう有する働きを持つ物質。アイロムはパーキンソン病などの治療薬研究に必要な細胞をより簡単に作製できるよう、京都大学iPS細胞研究所と共同研究契約を結んでいる。
 

企業 内容 発売
アイロムHD 臨床用iPS細胞作製用ベクター 15年夏


 

企業の動き

企業 iPS細胞関連の動き 開始
タカラバイオ iPS細胞から心筋細胞培養 14年10月~
ニプロ iPS細胞の大量培養装置実用化 15年
細胞科学研究所に出資。ヒトiPS細胞用基礎培養液 14年~
澁谷工業 網膜細胞シート 15年夏
イナリサーチ サルでiPS細胞の心臓移植試験 -
メガカリオン iPS細胞で止血剤の臨床試験 15年以降

【タカラバイオ】
2014年10月、iPS細胞から心筋細胞を大量培養し、新薬の安全性の確認に活用する技術開発がNEDOの研究開発委託事業に採択。新薬候補となる物質が不整脈を起こす副作用がないかを調べる装置を開発する。

【ニプロ】
京都大学などと共同でiPS細胞の大量培養装置を開発。従来の細胞培養ではボトルの上の容器内で細胞を増やしており、小型化に限界があったが、装置内にiPS細胞を入れる袋状の容器を6個並べ、効率性を高めた。2015年の実用化を目指す。

【澁谷工業】
iPS細胞で失われた網膜の黄斑を再生する医療に用いる「網膜細胞シート」作製を手がけるヘリオスと実施する網膜再生を2015年夏頃の開始を目指す。

【イナリサーチ】
2014年11月、信州大学医学部とiPS細胞を用いた再生医療技術を共同開発すると発表。カニクイザルを用いたiPS細胞の心臓移植を準備してきたが、全ての準備が整ったとして移植試験を開始する。

【メガカリオン】
京都大学と東京大学の研究グループが設立。iPS細胞を使い止血剤を生産。2013年9月に京都大学内に研究施設を新設。2015年以降に日米で治験を実施。安全性や効果が確認できれば2018~2020年をめどに国内で実用化できる見通し。