ギリシャ政府は、2015年6月30日、支払期限を迎えた国際通貨基金(IMF)への15億ユーロの債務を返済しなかった。7月5日にはEUなどのギリシャ支援の条件だった年金改革や税率引き上げなどの財政再建策を受け入れるかを問う国民投票で反対が60%を超え、財政再建策の受け入れ反対の民意が示された。

ギリシャのチプラス首相は、EUによる支援を巡る新たな提案を示す方針。EU側に、年金支給の削減など緊縮姿勢の緩和や債務の元本減免も含めた新たな金融支援を求める見通し。一方、EUは緊縮策の受け入れが支援の条件という従来の立場を崩していない。

ギリシャは7月20日にはECBへの35億ユーロの返済、8月20日には32億ユーロの返済が控えている。一方、ユーロ圏では危機が他の南欧諸国に波及するのを防ぐための安全網が導入されている。

今後の主なギリシャ問題の注目スケジュールとEUがギリシャに求める主な緊縮策、ギリシャ問題に対する主な政策手段をまとめた。


ギリシャ問題の主なスケジュール

月日 内容
7月5日 緊縮策を問う国民投票を実施
7月14日 円建て外債で110億円の返済
7月20日 ECBへ35億ユーロの返済
8月20日 ECBへ32億ユーロの返済


ギリシャへの融資シェア

ギリシャは2010年以降、EUやIMFから支援を受け入れ。2015年3月末時点で公的債務は約3120億ユーロ(約40兆円)ある。ギリシャ国債を持っているのはECBやIMFなど公的機関が中心で、全体の約80%を占める。

機関 シェア 融資額
欧州金融安定基金(EFSF) 42% 1310億ユーロ
欧州中央銀行(ECB) 9% 270億ユーロ
国際通貨基金(IMF) 7% 220億ユーロ
民間 12% 390億ユーロ


EUがギリシャに求める主な緊縮策

項目 内容
付加価値税 外食などに認められている軽減税率を標準税率(23%)に引き上げるなどしてGDPの1%相当の税収を確保
年金 早期退職制度などを見直し、2016年にGDPの1%分の支出を削減
社会保障制度の見直しに着手
労働 国際労働機関(ILO)など国際機関も参加し、改革に向けた検討開始
国防費 4億ユーロを削減

 

ギリシャ問題に対する主な政策手段

政策手段 内容
量的緩和 ECBが必要に応じて量的緩和策を拡張
国債買入策(OMT) 危機時にECBが無制限に国債を買入れ
緊急流動性支援(ELA) 緊急時に各国中銀が銀行の資金繰りを支援
欧州安定メカニズム(ESM) ユーロ加盟国が財政難に陥った場合に金融支援

【量的緩和】
国債を大量に買い入れて資金を流す政策。ECBは、2015年1月22日、毎月600億ユーロ(約8兆円)を買い入れる量的緩和の導入を決定。買入対象はユーロ圏の政府の他、欧州連合(EU)の国際機関が発行するユーロ建て債券。期間は2015年3月から2016年9月。買取総額は1兆ユーロを超える見通し。

なお、ギリシャの国債は財政再建の公約を守るなどを条件に対象に加える。

項目 内容
買入規模 毎月600億ユーロ 総額1兆ユーロ
買入対象 ユーロ圏政府、EU関連国際機関が発行するユーロ建て債券
期間 2015年3月~2016年9月
ギリシャ国債 財政再建の公約を守るなどを条件に対象に加える


【緊急流動性支援(ELA)】
ユーロ圏の各国中央銀行が自国の金融機関に緊急融資する支援。規模が大きくなると欧州中央銀行(ECB)の承認が必要になる。経営不安で格付けが下がり、ECBによる定期的な資金供給を受け入れられなくなった金融機関が支援の対象となる。一方、ECBはELAによる資金供給が健全性の疑われる銀行への延命支援と判断すれば中止命令が出せる。


【欧州安定メカニズム(ESM)】
EU加盟国が金融危機のリスクにさらされた場合、ユーロ圏全体で資金を出し合って金融支援を提供し、支える仕組み。資金難に陥った国の財政資金を援助したり、資金不足に直面した金融機関の資本増強に必要な資金を融資したりする。金利高騰など国債市場の安定が損なわれた場合は、ユーロ圏加盟国の国債を買い支える。最大5000億ユーロの融資が可能。