アルゼンチンはペソ買い・ドル売りの為替介入で自国通貨の買い支えをしてきたが、外貨準備高が2010年の521億ドルから2013年末には305億ドルまで減少。介入による通貨防衛が難しくなったとの観測からアルゼンチン・ペソが下落している。 アルゼンチンは為替管理の緩和を発表。2014年1月からドル買いへの税率を35%から20%に引き下げ、普通預金口座でドル購入も認めた。 また、2014年6月16日、米国最高裁判所は債務削減に応じなかった米ファンドなどが求める13億3000万ドル(約1300億円)の債務返済をアルゼンチン政府に命じる判決を示した。債務削減を拒否した支払いは総額で150億ドルに達するとされており、資金繰りの懸念が拡がる可能性がある。2014年7月31日、米ファンドとの交渉が決裂し、アルゼンチン国債は支払い能力はあるが一時的な返済が滞るテクニカルデフォルトとみなされる。


アルゼンチンの主な経済状況

 【経済成長率】
国際通貨基金(IMF)は、アルゼンチンの2013年の実質経済成長率を2014年は2.8%と予測する。穀物の輸出不調やブラジルの経済低迷が影響する。

成長率
2000年 ▲0.8%
2001年 ▲4.4%
2002年 ▲10.9%
2003年 8.8%
2004年 9%
2005年 9.2%
2006年 8.5%
2007年 8.6%
2008年 6.8%
2009年 0.8%
2010年 9.2%
2011年 8.9%
2012年 1.9%
2013年(予) 3.5%
2014年(予) 2.8%

【外貨準備高】

外貨準備高
2010年 521億ドル
2013年 305億ドル

 

【経常収支】

経常収支
2010年 13億ドル
2011年 ▲21億ドル
2012年 ▲.5億ドル


アルゼンチンの抱える問題

 アルゼンチンは2001年にデフォルト(債務不履行)を宣言して以降、返済条件見直しなど再編問題が決着していない。日本やドイツなどで構成するパリクラブ(主要債権国会議)に対し97億ドルの未返済債務を抱える。また、民間債務再編に応じた債権者に対し、アルゼンチンはGDP連動国債を発行。成長率に応じた支払いを実施している。一方、債務再編に応じなかった米国ファンドは国債の元利金の全額返済を求めており、米国の裁判所で係争を続けている。

対象 内容
パリクラブ 97億ドルの未返済債務
米ファンド 債務再編に応じず、国際の元利金の全額返済を求める

【米ファンド】
アルゼンチン政府と債務再編に応じなかった米ファンドとの債務返済条件を巡る交渉が、2014年7月30日、決裂した。アルゼンチン国債は支払い能力はあるが一時的な返済が滞るテクニカルデフォルトと見なされる。 2014年6月16日、米国最高裁判所は債務削減に応じなかった米ファンドなどが求める13億3000万ドル(約1300億円)の債務返済をアルゼンチン政府に命じる判決を出した。これによりアルゼンチン政府は米ファンドに13億3000万ドルを支払うか、返済条件の調整を進めないと、他の国債保有者に返済ができない状態となった。しかし、2014年7月31日、米ファンドとの交渉は決裂し、支払い能力はあるが一時的な返済が滞るテクニカルデフォルトとみなされた。 アルゼンチン政府と米ファンドは交渉を継続していく方針。 一方、アルゼンチンのフェルナンデス大統領は、2014年8月19日、アルゼンチン国債が準拠する法律を米国からアルゼンチンに切り替える方針を公表。2014年9月11日、米国からアルゼンチンに切り替えられる法案を可決した。米国裁判所が利払いを禁じた効力を及ばないようにし、国債利払いを継続できるようにする狙い。これに対し、米連邦地方裁判所は、2014年8月21日、アルゼンチン国債の準拠する法律切り替えに対し違法との認識を示している。 なお、債務削減を拒否した支払いは総額で150億ドルに達するとされている。これに対し、返済の原資となるアルゼンチンの外貨準備は2013年末時点で305億ドルで、資金繰りの懸念が広がる可能性がある。

項目 内容
米ファンドへの債務返済判決 13.3億ドル
債務削減を拒否した支払い総額 150億ドル

【パリクラブ】
ドイツや日本などで構成するパリクラブ(主要債権国会議)に対し、約97億ドルの未返済債務を抱える。2014年5月に2019年までに返済を完了することで合意。2014年7月28日に6億4200万ドル(約650億円)を返済。2015年5月までに少なくとも11億5000万ドルを返済する計画。

  総返済額 14年7月
返済額 97億ドル 7.42億ドル