英EU離脱により、今後EU単一市場へのアクセスをどう確保するかが焦点となる。離脱交渉は原則として開始後2年で英国へのEU法適用が停止する。それまでに経済や司法、教育など多くの分野で新協定を結ぶ必要がある。EUは、英国との間で自由貿易協定を柱とした包括的な新協定の早期締結を念頭に置く。ノルウェーやスイスなど、EUに加盟していない国が経済連携のためEUと結んでいる事例がモデルケースとなる。

ノルウェーは、アイスランドとリヒテンシュタインと共にEU加盟28カ国と作る欧州経済地域(EEA)を構成し、単一市場に参加している。モノの貿易では農業・漁業分野を除き関税が撤廃されており、EU加盟国と同じ恩恵を受けている。一方、通関手続きなど非関税障壁があり、大量の書類提出など事務コストが大きい。EUの法律や規制の遵守、拠出金負担も求められるが、政策の意思決定には参加できない。人の受け入れ自由も受け入れている。

スイスは、EEAに参加しておらずEU単一市場へのアクセス権がないため、分野ごとにEUと協定を結んで対応している。金融サービスは含まれていない。

カナダは、EUと工業製品の関税撤廃などを盛り込んだ包括的経済・貿易協定(CETA)に合意。移民労働者の受け入れ義務は含まず、拠出金負担もない。しかしながら、カナダは合意に10年以上を要している。

交渉が決裂した場合は、通商分野で世界貿易機関(WTO)ルールに頼る可能性がある。EUに拠出金を支払ったり、人の移動の自由を受け入れたりする必要はないものの、関税障壁が復活し、単一市場の恩恵は受けられなくなる。


英EU離脱 EU単一市場へのアクセスは?

モデル EUとの関係
ノルウェー EEAで単一市場に参加
モノの貿易では農業・漁業分野を除き関税が撤廃
大量の書類提出など事務コストが大きい
EUの法律や規制の遵守、拠出金負担が求められる
EUの政策の意思決定には参加できない
人の受け入れ自由を受け入れ
スイス 分野ごとにEUと協定締結。金融サービスは含まれない
カナダ CETAに合意し工業製品の関税撤廃
拠出金負担なし
移民受け入れ義務なし
WTO 関税障壁が復活
EUへの拠出金や人の移動の自由の受け入れ義務なし