遺伝子治療とは、人の身体に特定の遺伝子を入れ、正常な機能を果たしていない遺伝子の働きを抑制したり、補ったりして正常な機能を回復し、病気を治すもの。遺伝子の欠損が原因の遺伝病を治したり、失われた組織を再生させることが可能という。

遺伝子治療は再生医療と並ぶ次世代医療の柱で、遺伝子治療薬の世界市場は2020年に400億ドル(約4兆7000億円)との試算があるが、まだほとんど製品化されていない。調査会社シード・プランニングによると、日米欧の遺伝子治療薬の市場規模は2016年の24億円から2030年に5兆6000億円と急拡大する見通し。

日本では2014年の改正薬事法で、遺伝子治療の規制緩和が行われ、欧米では10年前後かかる開発期間を数年短縮できるようになった。


遺伝子治療 関連企業の動き

コード 企業 内容
4974 タカラバイオ 骨膜肉腫、急性リンパ芽急性白血病の治療薬
4578 大塚HD
4901 富士フイルムHD 抗がん剤「FF-10832」を開発
2372 アイロムグループ 虚血肢治療剤を2022年に上市予定
4563 アンジェス 重症虚血肢の治療薬を製造販売承認申請
4508 田辺三菱製薬
4503 アステラス製薬 進行がんを治す治療薬を開発
4569 キョーリン製薬HD 中皮腫の遺伝子治療の治験を開始


【タカラバイオ 大塚ホールディングス】
2018年4月、タカラバイオと大塚製薬は、NY-ESO-1・siTCR遺伝子治療薬及びCD・CAR遺伝子治療薬の日本国内における共同開発・独占販売に関する契約を締結すると発表。NY-ESO-1・siTCR遺伝子治療薬は骨膜肉腫で、CD19・CAR遺伝子治療薬は急性リンパ芽急性白血病で第1/2臨床試験をそれぞれ実施している。


【富士フイルムホールディングス】
富山化学工業の医薬品生産拠点に約40億円を投資し、新工場を建設する。抗がん剤「FF-10832」など独自技術を活かしたリポソーム製剤の治療薬製造や商業生産を行う。2018年9月に着工し、2020年2月に稼働する。2018年度内の米国臨床第1相試験の開始を目指している。

リポゾーム製剤とは、細胞膜や生体膜の構成成分である有機物のリン脂質などをカプセル上にした微粒子の中に薬物を内包した製剤。抗がん剤「FF-10832」は、リポゾーム製剤化していない既存薬に比べ、60分の1の低用量でも大幅に上回る薬効をマウスで確認している。


【アイロムグループ】
アイロムグループの遺伝子治療薬「虚血肢治療剤」が2022年に上市される予定となっている。虚血肢治療剤は、閉鎖性動脈硬化症や糖尿病など様々な要因を起因とする下肢血行障害の治療薬。日本では40万人、欧米では300万人、中国では648万人の患者がいるとみられている。開発状況は、日本でフェーズ2、中国では前臨床、オーストラリアでは2016年5月に臨床試験を開始した。

今後の流れでは、日本では2017年11月に「先駆け審査指定制度」に申込。2019年中に中間解析結果により早期製造承認を申請。早期の承認を目指す。中国では、2018年の早期に第1相臨床試験を開始する予定となっている。


【アンジェス 田辺三菱製薬】
アンジェスと田辺三菱製薬は、糖尿病などが原因で発症する「重症虚血肢」の治療薬を発売する。重症虚血肢とは、足の血流が悪くなり、血管が壊死する病気で、進行すれば足の切断につながる可能性があるという。アンジェスが開発した治療薬は、健康な人から取り出した遺伝子を使い、血管を新たにつくる機能を持つ。患者の足に注射すると、古い血管にかわる新しい血管が出来上がるという。

2016年内に臨床試験の目処を付け、2017年に早い時期に国内で発売する計画だったが、2018年1月22日に厚生労働省に再生医療等製品の製造販売承認申請を実施した。承認されれば、国内で初の遺伝子治療薬となる。

田辺三菱製薬は、日米で販売権を持つ。

 
【アステラス製薬】
アステラス製薬は米ベリカムと提携。従来の抗がん剤では治療できない進行がんを治す薬を開発。がんを攻撃する性質を持つ遺伝子を挿入した細胞を培養し、がん患者に注射する。


【キョーリン製薬ホールディングス】
キョーリン製薬ホールディングスは岡山大学発のベンチャーと提携。アスベストが原因で発症する難治性のがんである中皮腫の遺伝子治療の治験を開始。