日本政府は法人税の実効税率の引き下げ幅を2016年度までに2%台後半にする方針。現在、日本の法人税実行税率は国税分が23.71%、地方税分が23.71%で合計35.64%。2014年度までは東日本大震災の復興財源として復興特別法人税がかかるため、これを含めた実行税率は38.01%となっている。2014年度に法人実効税率を38.01%から35.64%に引き下げるとともに、2015年度以降に主要国並みに引き下げる方針。

なお、1%の実効税率引き下げで、国と地方は約5000億円の減収となるもよう。経済産業省は法人税率が10%下げれば、国内総生産(GDP)が7兆円増えると試算。企業が設備投資を海外から国内に戻す効果を見込む。

法人税変動 国・地方の税収変動額
1% 5000億円

 

主な財源確保策

項目 内容
欠損金繰越控除を縮小 3000億円
外形標準課税を拡大 7500億円
政策減税の廃止・縮小 2500億円
研究開発減税の縮小 3700億円
東京都など上乗せ税率見直し 5000億円

 
【外形標準課税】
企業が都道府県に納める「法人事業税」のうち、外形標準課税の割合を高め、資本金が1億円以下の企業も課税対象にすることを検討。法人税の課税対象は利益なのに対し、外形標準課税の対象は企業の資本金や従業員への給与総額などを指標とする。そのため、赤字企業でも増税の義務があり、政府は増税分を法人税率引き下げの原資に充てたい考え。

政府は2004年に資本金1億円以上の大企業を対象に外形標準課税を導入。法人事業税のうち、所得にかかる税率を9.6%から7.2%に下げ、減った税収を外形標準課税で穴埋めした。地方税は法人税収の約30%を占めており、外形標準課税の税収は約6000億円。

【設備投資・雇用減税廃止】
設備投資や雇用を促す税制を2017年頃までに順次廃止を検討。対象は生産性の高い設備を導入すると初年度に投資額の5%減税する「設備投資促進税」、雇用を1人増やすごとに40万円減税する「雇用促進税制」、給与総額を増やした分の10%を減税する「賃上げ促進税」など。約5000億円の税収増を確保する。

【公益法人】
公益法人などへの課税を強めることを検討。34の収益事業に適用している法人税の軽減税率の廃止・縮小などを検討する。また、収益事業の枠を広げ、課税対象となる事業を増やすことも検討。さらに、公益法人の資産運用益に対する法人税が非課税になる場合が多いことから、資産運用益への課税も議論。


試算

【日本経済研究センター】
日本経済研究センターは、法人実効税率を引き下げた場合の2030年までの実質GDPの試算をまとめた。海外から資本や人材を呼び込むことで、高い経済成長が可能になるという。税収が減った分は追加の消費増税で補うべきだとの考え方も示した。

法人税率 消費税率 2030年のGDP
35.34% 10% 619兆円
25% 10% 669兆円
25% 12% 664兆円
25% 19% 647兆円

 
消費税率を19%にすれば、2025年頃から借金に頼らず社会保障などの必要経費を賄える様になり、国と地方の借金のGDP比は200%程度で安定するという。


主要国の法人税率とGDP見通し

先進7カ国(G7)で比較すると、日本を上回る税率となっているのは米国の39.1%だけ。その米国も法人税の見直しを提案し、法人税の最高税率を35%から28%に引き下げることを検討している。

法人税率 GDP
2013年 2014年
日本 35.64% 1.5% 1.4%
米国 39.1% 1.9% 2.8%
英国 24% 1.9% 2.7%
カナダ 33.5% 2.0% -
イタリア 27.5% ▲1.9% 0.6%
ドイツ 29.55% 0.4% 1.6%
フランス 33.33% 0.3% 0.9%
中国 25% 7.7% 7.5%
シンガポール 17% 4.1% 3.9%
韓国 27.5% 2.8% 3.7%
タイ 20% 2.9% 4.5%
ベトナム 22% 5.4% 5.8%
インドネシア 25% 5.78% 5.7%
マレーシア 25% 4.7% 5.1%
フィリピン 30% 7.2% 6.4%