イタリア政府は、多額の不良債権を抱えるイタリアの銀行に救済策を打ち出す方針であるもよう。欧米のメディアなどが報じた。

政府はまず、政府系金融機関CDPを通じて経営の厳しいモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナに資本注入することを検討。その上で、2016年春に政府主導で発足した民間投資ファンドの不良債権買取機能を増強し、他の銀行を支援するとしていたが、公的資金の注入を見送り。証券化した不良債権の売却と増資を後押しして健全化を図る方針を示した。

欧州連合(EU)の欧州委員会は、国が公的資金で銀行を救済する際には債権保有者らも一定の損失を負うことを決めている。多くの個人投資家が銀行債を持つため、イタリア政府は公的資金の投入には否定的という。

モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナは、2016年7月末、100億ユーロの不良債権を証券化し、大手銀行や保険会社が参加する民間ファンドに売却。その後に増資で最大50億ユーロ(約5700億円)を調達する健全化策を発表した。その後、2016年12月4日、イタリア国民投票で憲法改正案が否決。レンツィ首相が辞意を表明し、政局の先行きが不透明化。増資が頓挫する可能性が出てきたことから、公的資金の注入を検討しているもよう。

モンテ・ディ・パスキ・ディ・シエナは、イタリア3位の銀行。欧州中央銀行(ECB)から2016年7月4日、2018年までに不良債権を40%削減するように求められている。不良債権の総額は2015年で469億ユーロ(約5兆3000億円)。

イタリア最大手の銀行であるウニクレディットは、欧州銀行監督機構(EBA)の資産査定で、景気悪化シナリオでは中核的自己資本比率が2018年に7.12%に下がると判断された。2016年8月3日発表の4-6月期の決算では、中核的自己資本比率は10.33%だった。

ウニクレディットは、2016年12月13日、130億ユーロ(約1兆6000億円)の増資や不良債権の売却などを柱とする中期経営計画を発表。不良債権は177億ユーロに相当する融資を証券化でファンドなどに売却。2017年中に2割を売却、2019年までに残りを売却する。不良債権比率を2016年9月の15.1%から2019年に8.4%に引き下げる。従業員数は1万4000人を削減し、人件費を11億ユーロ減らす。また、非中核事業の整理も進める。

日本経済新聞によると、イタリアの銀行は約3600億ユーロ(約41兆円)の不良債権を抱えている。ユーロ圏の不良債権の約3分の1を占める。英国のEU離脱の影響で経済が減速すれば、銀行の不良債権は増える。経営難の銀行を放置すれば信用不安を引き起こしかねないため、経営の健全化を急ぐ考え。


イタリア 銀行の不良債権問題

【イタリアの銀行の不良債権】

項目 内容
イタリアの銀行の不良債権 3600億ユーロ(約41兆円)
ユーロ圏の不良債権の約3分の1


【モンテ・ディ・パスキ・ディ・シエナ】

項目 内容
不良債権総額 469億ユーロ(約5兆3000億円)
健全化策 不良債権を売却 100億ユーロ(約1兆3000億円)の不良債権を証券化し、ファンドに売却
増資 最大50億ユーロ(約5700億円)を調達


【ウニクレディット】

項目 内容
中核的自己資本比率 EBAの資産査定で2018年に7.12%に下落と試算
2016年度4-6月期決算時点では10.33%
経営計画 増資額  130億ユーロ(約1兆6000億円)
不良債権売却額 177億ユーロ 2019年までに完了
不良債権比率 2016年9月15.1%→2019年8.4%
従業員数 1万4000人を削減し、人件費11億ユーロを削減