武田薬品工業は、2015年4月29日、2型糖尿病治療剤「アクトス」における米国での製造物責任訴訟で、原告側と和解に向けて合意したと発表した。和解金や訴訟費用などとして27億ドル(約3241億円)を引当計上する。和解は原告及びクレーム提起者の95%が受け入れを選択した場合に有効となる。また、97%以上が受け入れを選択した場合、和解基金への支払い額は24億ドルになる。

薬の副作用で膀胱がんになったとする訴訟をきっかけに、現在では製造物責任訴訟が約9000件まで拡大しているもよう。原告との訴訟を維持するためには、年間100億円規模の費用が必要だった。

武田薬品工業は、財務上の不確実性を低減。新薬の大型化へ経営資源を集中させる。


アクトスの賠償問題 和解へ

項目 内容
和解引当金 3241億円
和解成立要件 原告及びクレーム提起者の95%が受け入れ

 

アクトスの製造物責任訴訟

2014年4月8日に糖尿病治療薬「アクトス」に関連するがん発症リスクを隠していたとして補償的損害賠償147万ドル(約1.5億円)、懲罰的損害賠償として60億ドル(約6200億円)を武田薬品工業に命じた裁判で、2014年9月4日、原告の主張を認める判決となったと発表した。

裁判を起こした米国の男性は、アクトス投与が原因で膀胱がんになったと主張。男性の弁護士側はアクトスと膀胱がんとの関連性を示す研究結果について、7年以上も具体的な警告を発するのを怠っていたと主張している。

一方、武田薬品工業は「このたびの賠償評決は大変遺憾であり、到底承服できない」「提出された証拠は膀胱がんとの間に因果関係があるとの事実を支持していないと確信している」との立場で、上訴を含め、あらゆる法的手段を以って争うとしている。

なお、補償的損害賠償については147万ドルから127万ドルに減額。2014年10月28日には懲罰的損害賠償が60億ドルから2765万ドルに減額された。


【損害賠償概要】

企業 賠償 賠償額
武田薬品工業 補償的損害賠償 147万ドル(約1.5億円)→127万ドル(約1.2億円)
懲罰的損害賠償 60億ドル(約6200億円)→2765万ドル(約29億円)

 

アクトスの売上高推移

  2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年
アクトス売上高 3962億円 3870億円 3847億円 3879億円 2962億円 1733億円 366億円

※アクトスは2011年に特許が切れている。

 

業績

  売上収益 税引前利益 純利益 資本 資産 自己資本比率
2014年(予) 1兆7550億円 ▲1450億円 ▲1450億円 - - -
2013年 1兆6916億円 1588億円 1066億円 2兆5406億円 4兆5691億円 54.1%
2012年 1兆5570億円 1330億円 1485億円 2兆3382億円 4兆525億円 56.1%
  売上高 経常利益 純利益 純資産 総資産 自己資本比率
2011年 1兆5089億円 2703億円 1241億円 2兆718億円 3兆5770億円 56.2%
2010年 1兆4193億円 3715億円 2478億円 1兆1366億円 2兆7864億円 75.1%

※2012年からIFRS適用
 

【医薬用医薬品事業の業績推移】

  2009年 2010年 2011年 2012年 2013年
売上高 1兆3210億円 1兆2705億円 1兆3620億円 1兆4047億円 1兆5321億円
営業利益 4005億円 3459億円 2437億円 990億円 1121億円
営業利益率 30.3% 27.2% 17.8% 7% 7.3%