政府は人工知能(AI)を使った高精度の同時通訳システムを2020年の東京五輪・パラリンピックまでに実用化する計画で、2019年度までに100億円を投じる。

スマートフォンのほか腕時計や小型スピーカーなどの活用を想定。観光地にある看板をスマホカメラで撮影するだけで、自動で他の言語の翻訳して表示するアプリケーションの開発も同時に行うという。ビジネスや観光、医療で課題となる言葉の壁をなくす。

総務省と情報通信研究機構(NICT)は、2017年9月、翻訳データを集積する「翻訳バンク」の運用を開始すると発表した。様々な言語の翻訳文例を蓄積し、インターネットで使う自動翻訳の精度を高める。


自動翻訳 関連企業の動き

企業 内容
NEC 2017年11月から多言語音声翻訳サービスを提供開始
BBタワー AIを使ったリアルタイム翻訳サービスを開発
パナソニック 2015年7月に自動翻訳機をJTBの取引先ホテルに導入し実証実験
2018年に実用化 2020年に10カ国語に対応
フジテレビジョン 2017年6月から動画投稿サイトで自動翻訳 8カ国語へ
ロゼッタ 2025年までに人間の翻訳者と同等の精度を完成


【NEC】
訪日外国人の接客が生じる空港やホテル、百貨店などに向け外国語でのコミュニケーションを支援する「多言語音声翻訳サービス」を2017年11月から提供開始。日本語・英語・中国語・韓国語に対応した接客業向けの音声翻訳サービスで、1台で走行法での会話ができる。また、様々な業務シーンで対応できるよう、スマートフォンやタブレットで利用可能なアプリ版での提供や、専用の業務用小型端末も用意するという。


【ブロードバンドタワー】
ブロードバンドタワーと日本マイクロソフト、豊橋技術科学大学は、機械学習技術を使った訪日外国人向けリアルタイム翻訳サービスの開発で協力。外国語の音声を送ると即時に翻訳した日本語音声を返したり、日本語の文章を送ると外国語に翻訳して文字データを戻したりできるようにする。

豊橋技術科学大学が特定分野に絞って収集した大量の対訳データを機械学習し、分野ごとの正確な翻訳用辞書を作成。マイクロソフトの翻訳サービスに組み込んで高品質な翻訳を実現する計画。旅館や店舗などがシステムやアプリから呼び出して使える翻訳サービスを目指す。


【パナソニック】
パナソニックとJTBは、2015年7月にパナソニックの自動翻訳機をJTBの取引先ホテルに導入し、実証実験を開始した。受付窓口にディスプレーを設置し、観光客と従業員がマイクでやりとり。話した言葉をクラウド上で高速処理し、約2秒で自動翻訳するという。日本語、英語、中国語、韓国語の4ヶ国語に対応。2018年に実用化。2020年には10カ国に対応させる。


【フジテレビジョン】
フジテレビジョンは、日本マイクロソフトと人工知能(AI)分野で提携する。フジテレビの動画投稿サイト「ドリームファクトリー」で英語、中国語、スペイン語、フランス語に自動翻訳。2017年6月末から始め、8カ国語まで広げることを目指す。

将来的には映像製作にAIを使うことも視野。長編ドラマなどをAIで自動編集し、1分程度の番組宣伝動画を製作する。


【ロゼッタ】
人工知能型の機械翻訳を研究開発している。インターネット上の膨大な情報を言語のビッグデータとして統計分析を行う事で、機械が複数の訳語候補の中からどれが適切かを判断する。2025年までに人間の翻訳者とほぼ同等の精度を持つ機械翻訳を完成させることを目標としている。