ヘリオスは、iPS細胞を正常なRPE細胞に分化誘導し、iPS細胞由来のRPE細胞懸濁液又はシートを作製、移植することによって、加齢黄斑変性を治療する新たな治療法の早期実用化を目指し、RPE細胞の生産方法の確立や治験に向けた準備を進める。開発するiPSC再生医薬品は、iPS細胞を特定の細胞に分化誘導し、大量に培養した上で、医薬品として製剤化し、人体に移植する。

ヘリオスは患者自身の細胞から作製されたものだけでなく、京都大学iPS細胞研究所から提供される他人の細胞から作製されたものも用いる方針。


新規上場概要

項目 内容
上場予定日 2015年6月16日
1単元株式数 100株
主幹事 野村証券
公募・売出 1010万株
オーバーアロットメント 151万5000株
仮条件決定 1100円~1200円
ブック・ビルディング期間 2015年5月28日~2015年6月3日
公開価格 1200円

【主要株主】

コード 企業 保有割合
4605 大日本住友製薬 4.02%
- 三井住友信託銀行 2.44%
7731 ニコン 1.34%
2395 新日本科学 0.8%
6340 澁谷工業 0.8%

【調達資金使途】
日本または欧米におけるiPS細胞由来網膜色素上皮細胞の研究開発費や設備投資に充当。


開発に向けた取組

【日本】
2013年12月、ヘリオスは大日本住友製薬と加齢黄斑変性などの眼疾患を対象としたiPS細胞由来の網膜色素上皮細胞(RPE細胞)を用いた国内での共同開発契約を締結。ヘリオスは大日本住友製薬からマイルストン収入16億円と最大52億円の開発資金を受領。2020年までに必要になる細胞の特性試験などの前臨床試験や試薬などの消耗品費用、臨床試験に要する費用、人件費などの開発費用を賄う。

製造販売承認後は、製剤化されたRPE細胞を医療機関に販売することにより医薬品収入を取得。大日本住友製薬との共同出資による合弁会社サイレジェンに製造・販売促進業務を委託し、サイレジェンから製品の供給に関してロイヤリティ収入を得る。

2017年から第Ⅰ相/第Ⅱ相試験に相当する臨床試験を数十症例程度の規模で開始。2019年下期頃に改正薬事法における製造販売にかかる条件付き承認の申請を行う予定。

項目 内容
日本 大日本住友製薬から68億円を受領。2020年までの開発費用に充当
2017年に臨床試験を開始
2019年下期頃に承認申請

【米国】
米国では日本での条件付き認証制度と同様の制度が存在しないため、第Ⅰ相/第Ⅱ相試験までの臨床試験を経て、薬事法に基づく製造販売承認申請を行う。米国の第Ⅰ相/第Ⅱ相試験開始後の開発の進捗が見えた段階で、追加の資金調達を実施。米国での開発継続と共同開発先またはライセンス契約締結を検討する。

2018年上期に米FDAに新薬臨床試験開始届けを提出。2018年内に第Ⅰ相/第Ⅱ相試験の開始を見込む。米FDAとの事前会議を通じて検討していく予定。

項目 内容
米国 臨床試験開始後の開発進捗が見えた段階で追加資金調達を実施
2018年上期に米FDAに新薬臨床試験開始届け出を提出
2018年内に第Ⅰ相/第Ⅱ相試験を開始

【欧州】
欧州については、米国の第Ⅰ相/第Ⅱ相試験の結果を使って、第Ⅲ相試験から試験を実施することを検討している。


自動培養装置

現在、技術者の手作業で行われている細胞培養負担を軽減するため、自動培養装置を大阪大学、ニコン、澁谷工業と共同開発している。

コード 企業
7731 ニコン
6340 澁谷工業


次のiPSC再生医薬品候補

横浜市立大学と共同研究。肝臓や腎臓、膵臓といった臓器再生を含め、パイプラインの拡充を模索する。


加齢黄斑変性の臨床研究

理化学研究所などは、2014年9月12日、iPS細胞を使って目の難病である加齢黄斑変性を治療する臨床研究で患者への移植を実施した。

患者の皮膚細胞からiPS細胞を作製。網膜細胞に育ててシート状にし、目に移植した。移植した細胞はがん化しないかなどを検証することを最重点に位置付け。1年間経過してがん化しなければ治療は成功と判断される。


【加齢黄斑変性】
治療の対象となるのは、網膜の中心にある「黄斑」に以上が起こる「滲出型加齢黄斑変性」。視覚機能で重要な役割を果たす黄斑部の機能が低下する病気で、視野の中心でものがゆがんで見えたり、小さく見えたり、視力が低下するという症状が起こる。国内50歳以上の約1%にみられるという。

滲出型加齢黄斑変性の原因は、異常な血管が生じ、出血が起こることで黄斑部が傷つくことから起こる。治療のためには異常な血管を取り除く、傷ついた黄斑部を再建する必要がある。


開発方針

臨床研究で患者への移植を実施するも、iPS細胞由来RPE細胞シート自体は臨床試験の段階に至っておらず、今後臨床試験を開始させ、製造販売承認を受けるまでには相当長期の開発期間が必要になる。

多額の資金を確保し、海外の薬事制度の動向などに対応しながら柔軟に開発を進める。


業績推移

  売上高 経常利益 純利益 純資産 総資産 自己資本比率
2014年 2.7億円 ▲4.7億円 ▲4.7億円 26億円 31億円 83.1%
2013年 5億円 1.7億円 0.8億円 30億円 40億円 75.7%
2012年 - ▲0.3億円 ▲0.3億円 ▲0.8億円 0.3億円 ▲98.5%
2011年 - 0.003億円 0.002億円 0.01億円 0.01億円 67.5%