国別のシェールガス開発

シェールガスとは、頁岩(けつがん)と呼ばれる固い岩盤のごく小さな隙間に閉じ込められている天然ガスや石油のこと。米国では地下2000~3000メートルの部分から採掘される。ここから長い年月をかけて漏れたガスや石油がもっと浅いところにたまって出来たものが従来のガス田や油田で、シェールはその源になるもの。シェール層の開発によって、地中から取り出せるガスや石油の量が格段に増え、将来のエネルギー不足の懸念が急速に後退している。

米国

シェールガスの開発によって米国は近くガスの国内自給を達成する見通し。2017年には世界最大の産油国とされている。このことより、中東などからガスや石油を輸入する必要が減ると見込まれる。

北米におけるシュールガスの生産コストは2010年代末までに100万BTUあたり5~7ドルになると予想されている。天然ガスの国際価格については輸送コストや他の要素による違いが存在するが、2020年頃まで6~13ドル(100万BTU単位)のレンジに収れんする見通し。

アメリカのシェールガス生産量は増加しているが、現在は主に国内で使われている。本格的な輸出は2015年以降になる。アメリカ以外にもシェールガスが存在する地域は多いものの、本格的な生産は2020年以降になる見込み。2007年には石炭が米国の発電用燃料の半分を占めていたが、その比率は37%まで落ち込んでいる。一方で、天然ガスは2012年には30%まで比率を伸ばしている。

2020年頃まで供給
シェールガス生産コスト天然ガス国際価格米産輸出米国以外の生産
5~7ドル6ドル~13ドル2015年以降2020年以降

【ドル高要因】

シェールガス開発は潜在的なドル売り要因となっている原油貿易の赤字縮小が見込まれることから、ドルが長期的な上昇トレンドに入るとの見方がある。米国の経常収支は2011年度4659億ドルの赤字で、そのうち貿易収支のガス・原油の赤字額は2279億ドルと大きな割合を占めている。シェールガスの開発で2020年の経常赤字が2012年水準に対し、約60%減るとの試算がある。また、国際エネルギー機関(IEA)は、北米は2030年に石油の純輸出国に転じると予測しており、石油取引の赤字が減少していくことが見込まれる。

日本

東日本大震災以降の原子力発電所停止により燃料費が増加している。2013年度は東日本大震災前の2010年度と比べて3.8兆円費用が増加すると試算されている。液化天然ガス(LNG)で1.6兆円、石油で2.4兆円分増加する。また、為替レートが1ドル100円前提とすると、平均1ドル80円台だった2012年度と比べると円安効果だけで7000億円増となる見通し。そこで割安な米国産シェールガスを調達し、燃料費調達コストの低減に動いている。

米国シェールガスをLNGにするための液化施設の利用量や液化費用、LNG運搬船の輸送量など日本に到着するまでの上乗せ料金は7ドル程度とされている。

企業内容
東京電力200万トン→240万トンに拡大
関西電力120万トン
中部電力・大阪ガス年間220万トンずつのLNG委託加工契約
東京ガステキサス州でシェールガス田権益を25%取得

【パナマ運河】

日本政府はパナマ運河の拡張工事に追加資金支援を検討。現在のパナマ運河は幅32メートルの船舶までしか通れず、40メートルを超える天然ガス(LNG)輸送船は運航できない。パナマ運河では2007年から拡張工事を開始。完成は2014年の計画だったが、工事費を巡る事業者と政府の対立などで2016年に遅れる見通し。

日本は2017年から米国から割安な「シェールガス」を輸入する計画。パナマ運河経由であれば北米から日本まで約20日だが、アフリカ南端の喜望峰経由だと約45日かかる。喜望峰経由のLNG輸入コストはパナマ運河経由に比べて60~70%高くなる。

日本政府は100億円規模での追加融資と引換に、パナマ政府に早期完成や通航料の抑制を求める。パナマ運河拡張の総事業費は52億ドル(約5200億円)。23億ドルを海外から調達しており、日本は8億ドルを融資している。

カナダ産シェールガスプロジェクト

安倍晋三首相は、2013年9月24日、カナダのハーパー首相と会談し、カナダ産シェールガスの対日輸出に向けた協力を確認し、2018年末にシェールガスの対日輸出を解禁する。日本の年間輸入量の約10%にあたる800万トンから900万トンの調達を見込む。

LNG価格は、米国産が100万BTUあたり約10ドルで推移しているが、カナダ産はパナマ運河を経由する米国産より輸送日数が10日ほど短くなるため、輸送費が100万BTUあたり1ドルから2ドル安くなるとみられている。そのため、日本がカタールなどから輸入している現在のLNG価格である約17ドルから40%安く輸入できる可能性がある。

場所企業内容
ブリティッシュコロンビア州ペトロナス(マレーシア)石油資源開発 LNG生産量の10%にあたる120万トンを引き取る
石油資源開発
コルドバ堆積盆地PWE(50%)三菱商事 持分のガスを34%出資しているシーマ・エナジー社などを通じて北米市場で販売2月にカナダ政府から輸出許可。
三菱商事(30%)
韓国ガス公社(5%)
中部電力(3.75%)
東京ガス(3.75%)
大阪ガス(3.75%)

欧州・アジアでシェールガス開発が加速

米国やカナダに続き、欧州やアジアでシェールガスの開発が加速している。ポーランドでは2014年内をめどにシェールガスの商用生産が始まる見通し。ポーランドのシェールガス資源は欧州最大の148兆立方フィート。英国も優遇税制の導入などで開発を支援。土地所有者が反対した場合でも、地下300メートルよりも深ければ採掘を認める法案の整備に着手。2015年にも生産が始まると期待されている。

また、インドネシアやオーストラリアでは探鉱が進む。中国では米国からシェールガスを輸入することを念頭に、米国側に情報提供の要請や探鉱が進んでいる。

時期内容
英国2015年シェールガス採掘技術のフラッキングを解禁。優遇税制導入
ポーランド2014年2014年内をめどに商用生産開始
フランス-水質汚染など環境への配慮からフラッキングを全面禁止
ドイツ-
インドネシア2020年国営プルタミナが鉱区開発で当局と契約締結
中国2015年2015年に65億立方メートル、2020年に300億立方メートルの生産目標。開発コスト割高。インフラが未整備
豪州2012年地元大手サントスが商用生産を開始

【英国】

シェールガス採掘技術のフラッキングを解禁。政府は投資促進に向けて優遇税制を導入している。また、陸上での石油・ガス探査を希望する企業に新たに免許を付与する。英国には技術的に採掘可能なシェールガスが26兆立方フィートあるとみられている。

【インドネシア】

インドネシアの国営石油会社プルタミナは、スマトラ島北部の鉱区開発で当局と契約を締結。20年間で78億ドルを投資し、2020年の生産開始を目指す。インドネシアはLNG輸出国だが、高成長で石油やガスの国内需要が拡大している。シェールガス開発によって国内消費を賄うほか、将来のLNG価格の低下に備える。

【中国】

中国のシェールガスは山間部が多い南部や中西部に偏り、大部分が地下4000メートル以下の深い層にある。比較的平たんで浅い場所にある米国とは異なり、開発コストが割高。また、インフラの未整備でフラッキングに使う水が足りないという問題がある。

中国の国土資源省は重慶市で大型シェールガス田を確認したと発表。中国国営石油企業の中国石油化工集団が開発中のガス田で、埋蔵量は1067億立方メートルに及ぶという。2017年にも商業生産を始める見通し。

【豪州】

最大需要地であるアジアに近い地理的優位性を活かして輸出を狙う。2012年10月に地元大手のサントスが初めてシェールガスの商用生産を開始。2013年、米シェブロンが中部2鉱区で最大60%の権益を取得すると発表した。

シェールガスの世界推定埋蔵量

米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は、2013年6月10日、世界のシェールガス可採埋蔵量(石油・ガス資源の推定量)が7299兆立方フィートと2011年時点の6622兆立方フィートから増加したと発表した。シェールガスの推定埋蔵量が世界最大なのは米国で1161兆立方フィート、中国は1115兆立方フィート、アルゼンチンは802兆立方フィートと続く。

推定埋蔵量
米国1161兆立方フィート
中国1115兆立方フィート
アルゼンチン802兆立方フィート
アルジェリア707兆立方フィート