日本郵政は、2014年12月26日、2015年度半ば以降に日本郵政とゆうちょ銀行、かんぽ生命保険を含めた3社を同時に上場させる計画を発表した。財務省は初回の売却規模を3社合計で1~2兆円規模との見方を表明。売却収入は東日本大震災の復興財源に充てる方針。郵政民営化法により、日本郵政が保有するゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式はできる限り早期に全て処分するものとされている。まずは、保有割合が50%程度になるまで段階的に売却していく。
日本郵政グループの株式は政府が100%保有している。2012年春に成立した郵政民営化見直し法では、政府が日本郵政株の3分の1超を残して売却できるようになった。政府は3分の2を売却するため、2015年度から2022年度の間に3回に分けて売却。東日本大震災の復興財源として4兆円を確保する。また、日本郵政は金融2社の売却資金で政府が保有する自社株を買い入れる考えも示している。
主要業績指数推移
経常収益 | 経常利益 | 純利益 | 純資産 | 総資産 | |
2014年(予) | - | 8200億円 | 3300億円 | - | - |
2013年 | 15兆2401億円 | 1兆1036億円 | 4790億円 | 13兆3886億円 | 292兆2464億円 |
2012年 | 15兆8491億円 | 1兆2250億円 | 5627億円 | 12兆4481億円 | 292兆8929億円 |
2011年 | 16兆6614億円 | 1兆1768億円 | 4689億円 | 10兆9353億円 | 292兆1265億円 |
2010年 | 17兆4689億円 | 9569億円 | 4189億円 | 9兆9999億円 | 292兆9330億円 |
2009年 | 18兆7736億円 | 1兆72億円 | 4502億円 | 9兆6259億円 | 298兆5713億円 |
【日本郵便】
日本郵便は、ゆうパックやゆうメール、手紙・はがきなどの郵便物を配達するサービスや郵便局業務を全国に展開している。宅配便取扱数や受託手数料が減少する中、人件費や経費の効率化を進めている。
売上高 | 経常利益 | 純利益 | |
2013年 | 2兆7739億円 | 525億円 | 329億円 |
2012年 | 2兆9834億円 | 800億円 | 600億円 |
2011年 | 3兆234億円 | 327億円 | 143億円 |
2010年 | 3兆881億円 | ▲308億円 | ▲48億円 |
2009年 | 3兆1287億円 | 1193億円 | ▲145億円 |
【ゆうちょ銀行】
直営店と銀行代理店である郵便局を合わせて全国2万4000ヶ所で、貯金や送金・決済などのサービスを提供している。ゆうちょ銀行の貯金残高は176兆円と前期比0.4兆円増。資産運用状況は国債を中心とした有価証券が171兆円、貸付金が3兆円などとなっている。
売上高 | 経常利益 | 純利益 | |
2013年 | 2兆763億円 | 5650億円 | 3546億円 |
2012年 | 2兆1258億円 | 5935億円 | 3739億円 |
2011年 | 2兆2345億円 | 5762億円 | 3348億円 |
2010年 | 2兆2053億円 | 5265億円 | 3163億円 |
2009年 | 2兆2079億円 | 4942億円 | 2067億円 |
【かんぽ生命】
かんぽ生命保険は郵便局との連携により、個人保険の新契約数は221万件と前期比8.5万件増えた。一方、保有契約数は前期比223万件減の3681万件となった。資産運用状況は国債を中心とした有価証券が72兆円、貸付金が12兆円などとなっている。
売上高 | 経常利益 | 純利益 | |
2013年 | 11兆2339億円 | 4635億円 | 634億円 |
2012年 | 11兆8349億円 | 5293億円 | 910億円 |
2011年 | 12兆5386億円 | 5313億円 | 677億円 |
2010年 | 13兆3754億円 | 4222億円 | 772億円 |
2009年 | 14兆5916億円 | 3796億円 | 701億円 |
経営計画
【2014年~2016年 中期経営計画】
2014年2月26日、2014~2016年の中期経営計画を発表し、老朽化した郵便局舎やシステム改修などに総額1兆3000億円を投じることや2016年に連結純利益3500億円を目指す方針を示した。
2016年 | 経常利益 | 純利益 | 取組 |
日本郵便 | 720億円 | 280億円 | ゆうパック取扱個数 3.8億個→5億個 |
ゆうメール取扱物数 31億個→40億個 | |||
ゆうちょ銀行 | 3400億円 | 2200億円 | 総貯金残高 177.8兆円→183.8兆円 |
かんぽ生命 | - | 800億円 | 新契約月額保険料 427億円→500億円 |
総額 | 対象 | 金額 | |
設備投資 | 1兆3000億円 | 施設・設備 | 5500億円 |
システム | 4900億円 | ||
不動産開発 | 1000億円 | ||
ネットワーク高度化 | 1600億円 |
【日本郵便 メガ物流局を新設】
日本郵便は東京ドーム級の広さのメガ物流局を新設。2018年度までに約1800億円を投じ、全国20ヶ所に新設する。
項目 | 内容 |
投資額 | 1800億円 |
対象 | メガ物流局20ヶ所 |
効果 | 配達にかかる時間を短縮 |
期間 | 2018年度まで |
【日本郵便 国際物流で提携】
仏ジオポストと香港レントンと資本業務提携。仏ジオポストが出資している香港レントンの株式14.9%を取得する。投資額は約50億円。日本郵便はジオポストの拠点を使い、アジアや欧州など世界49カ国に宅配便を送れるようにする。
項目 | 内容 |
取得額 | 50億円 |
対象 | 香港レントン株式14.9% |
効果 | 仏ジオポストの物流網を利用 |
【郵便局に保育所】
日本郵便は保育大手のJPホールディングスと組み、郵便局内に認可保育所を開設する。2015年4月に開業する。大型物流拠点設立に伴う設備移転で空いた敷地を生かす。
【日本郵便 ネット通販一括代行に参入】
日本郵便は、2014年秋にインターネット通販サイトの立ち上げから在庫管理、配送、決済を一括して引き受けるサービスを始める。地域の特産品などを扱う中小のネット通販会社からの手数料収入を見込む。決済代行の子会社を立ち上げ。自社倉庫も2016年度末までに現在の7倍にする。