第24回参院選。2016年6月22日に公示。2016年7月10日に投開票される。参議院議員の定数は242議席で、半数の121議席が改選。与党の自民・公明両党は76議席、野党の民進・共産・社民など野党は45議席を持つ。与党は46議席をとれば過半数を維持できる。安倍首相は勝敗ラインを与党で61議席に設定した。

自民・公明両党は、雇用拡大や税収増などの成果を示し、アベノミクスの継続を訴える。民進・共産・社民・生活の野党4党は、個人消費の力強さを欠く状況をアベノミクスの失敗と批判し、経済政策の転換を求める。また、TPPや憲法改正の国会発議に必要な議席数の行方も焦点となる。


TPP

【TPPでのGDP押し上げ効果】
日本政府は、2015年12月、TPP発効により実質GDPを約14兆円(約3%)押し上げると試算した。投資ルールの共通化など関税以外の成果も織り込み。農林水産業への悪影響を大幅に抑えることを前提とした。投資ルールの共通化や規制緩和で外国企業が日本への進出を加速させれば、国内の設備投資や雇用が増える。日本の海外進出の拡大で、現地での収益を国内に還元する効果も期待されるとしている。

世界銀行は、TPPで加盟各国の2014年のGDPと輸出額を基準に2030年時点の押し上げ効果を試算。日本は2.7%押し上げになる。東南アジア地域で規制緩和が進み、コンビニや銀行などが進出できるようになる効果を見込む。また、加盟12カ国のGDPは平均で1.1%押し上げられる。

  日本のGDP押し上げ効果試算
日本政府 3%(14兆円)押し上げ
世界銀行 2.7%押し上げ


【国内農業への打撃を抑える対策】
TPPに伴う国内農業への打撃を抑える対策として、コメでは、日本政府は国産米を買い上げる。日本は米国と豪州にコメの無関税輸入枠を設ける。当初は5万6000トン。段階的に増やし、13年目から7万8400トンになる。日本政府は米国と豪州からの新規輸入分と同量の国産米を買い上げ。市場に出回るコメの総量を抑えて、国産米の価格が下がるのを防ぐ。

農地の大規模化を通じ生産コストの引き下げも促す。2014年度に複数の農地を集約し、農業法人などに貸し出す「農地中間管理機構」を設立。2016年度にも耕作放棄地への課税を強化して、同機構に農地を集まりやすくする。農地の大規模化に合わせたパイプラインなどの施設設備を支援する予算の増額も検討。高齢化が進む農地の新しい担い手の育成も支援する。

牛肉や豚肉では、収益が生産コストを下回った場合、その差額の80%を国と生産者の積立金などで補填する経営安全対策を拡充する。

また、2015年度の補正予算3兆3213億円のうち、TPPの国内対策として畜産や木材、水産業の強化に向けて1125億円を充当。畜産の競争力強化に向けた基金に610億円、木材・水産業の生産性向上に515億円を充当する。

項目 対策
コメ 国産米を買い上げ。市場に出回るコメの総量を抑え、価格下落を防ぐ
農地の大規模化による生産コストを引き下げ
牛肉・豚肉 経営安全対策を拡充
畜産 2015年度補正予算で生産力強化に向け610億円を充当
木材・水産業 2015年度補正予算で生産力強化に向け515億円を充当

 

憲法改正

憲法改正の国会発議に必要な議席数は、参院の3分の2の162議席。憲法改正に前向きな自民・公明・おおさか維新の会・日本のこころを大切にする党は84議席を持つ。一方、反対する民進・共産・社民・生活の4党は27議席を持つ。憲法改正に前向きな勢力が78議席を獲得するかも焦点となる。