2017年度の中央銀行の政策金利推移一覧。中央銀行の方針や経済成長見通し、インフレ率への対応などまとめ。


中央銀行の政策金利推移 2017年

  1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
ECB - - 0 0 - 0 0 - 0 0 - 0
英国 - 0.25 - - 0.25 0.25 - 0.25 0.25 - 0.5 -
トルコ 9.25 - 9.25 9.25 - - 9.25 - - 9.25 - -
オーストラリア - 1.5 1.5 1.5 1.5 - 1.5 1.5 1.5 - 1.5 1.5
韓国 1.25 1.25 - 1.25 1.25 - 1.25 1.25 - - 1.5 1.5
フィリピン - 3 3 - 3 3 - 3 3 - 3 3
インドネシア 4.75 4.75 4.75 4.75 4.75 4.75 4.75 4.5 4.25 4.25 4.25 -
ニュージーランド - 1.75 1.75 - 1.75 1.75 - 1.75 1.75 - 1.75  
マレーシア 3 - 3 - 3 - 3 - 3 - 3 -
インド - 6.25 - 6.25 - 6.25 - 6 - 6 - -
ブラジル 13 12.25 - 11.25 10.25 - 9.25 - 8.25 7.5 - 7
タイ - 1.5 1.5 - 1.5 - 1.5 1.5 1.5 - 1.5 1.5
ロシア - - 9.75 9.25 - 9 9 - 8.5 8.25 - 7.75


中央銀行別の主なポイント

【欧州中央銀行(ECB)】
欧州中央銀行は、2017年12月14日、金融政策方針の維持を決めた。ドラギ総裁は欧州経済について「力強い拡大と見通しの大きな改善」が見られるとした。

■2017年10月26日、量的緩和政策の大幅縮小を決定。デフレリスクは消えたと判断し、資産購入量を月600億ユーロから月300億ユーロに半減する。2018年1月から。資産購入終了時期は2017年12月末から2018年9月末まで延長した。

3月時点では、「金利を下げるという選択肢は排除した」との表現で、緩和縮小に向かうニュアンスをにじませた。7月時点では、政策金利の先行きを「現状かそれ以下の水準」から「当面の間、現状水準にとどまる」とした。ドラギ総裁は「ユーロ圏の経済により強い動きが見られる」「デフレのリスクはなくなった」「物価の基調は引き続き弱い」とした。9月時点では、政策変更について「おそらく10月に決定する」とし、2018年1月以降に量的緩和縮小に着手する方針を示した。また、ユーロ相場を「不確実生のもとになっている」と指摘。ECBの緩和縮小観測により進んでいるユーロ高をけん制した。物価見通しについては、2018年を1.2%、2019年を1.5%に小幅下方修正した。


【英国】
■2017年11月2日、政策金利を0.25%から0.5%に引き上げた。通貨ポンド安により勢いづく物価高を抑える。今後の利上げは「非常に緩やか」とし、正常化には時間をかける方針を強調した。英国ではEU離脱決定後に進んだポンド安により物価が急上昇している。英中銀はインフレ圧力が今後も高まる可能性があるとして、利上げの必要性で一致していた。量的緩和策による英国債の保有残高は4350億ポンド(約64兆円)に据え置く。

9月時点では、消費減速など経済活動が低調であることを考慮。カーニー総裁は「EU離脱に伴う不透明感が企業や消費者に影響を及ぼし始めた」とした。

また、金利については9月時点では、インフレ率を適正水準にするために「金融緩和措置の一部解除が今後数ヶ月で適切となる可能性が大きい」とし、利上げに踏み切る可能性を強く示唆した。5月時点では、今後の利上げは政府がEUとの新たな貿易協定締結や移行期間の設置で合意するなど、EU離脱交渉が円滑に進む事が条件になるとした。

■2017年2月2日、量的緩和策による新規国債購入を打ち切り、現状の資産規模を維持することを決めた。
 

【トルコ】
2017年10月26日、主要な政策金利である翌日物貸出金利を9.25%に据え置いた。インフレ見通しが大幅に改善するまで、引き締めスタンスを継続する方針。

エルドアン大統領は「高金利のせいでインフレ率が下がらない」とし、中銀に圧力をかけていることから、利上げは政治的に難しい。米国が利上げ局面に入った中、利下げはリラ下落につながり、インフレ圧力を高める。中銀は身動きがとりにくい状況にある。

■2017年1月24日、政策金利を8.5%から9.25%に引き上げた。トルコ中銀は「インフレ見通しの悪化を抑えるため、金融引き締めの強化を決めた」「必要ならば一段の引き締めを実施する」とした。

トルコには、米大統領選でのトランプ氏の勝利から進むドル高リラ安の進行と原油価格の上昇による物価上昇への懸念がある。通貨リラは2016年7月のクーデター未遂事件直後に発令した非常事態宣言を90日間延長したことや大統領権限の強化、イラクでの戦闘激化などへの懸念などから下落している。トルコ中銀のチュティカヤ総裁は2016年12月6日、通貨リラの急速な下落について「あらゆる手段を用いてリラの価値を守る」とした。今後の相場変動によっては追加の政策金利引き上げも辞さない構え。

経常赤字国のトルコは、工場建設から消費者ローンまで成長に必要な資金を海外に頼っている。企業は外貨建ての債務返済に苦しむ。2016年6月末時点のトルコの短期対外債務は1074億ドル(約12兆7000億円)で、外貨準備とほぼ同額。通貨危機など危機時への対応に不安を残す。


【オーストラリア】
2017年12月5日、政策金利を1.5%に据え置いた。豪中銀ロウ総裁は「今後数年の経済成長率が平均3%に上向く」とした。

2017年9月時点では「過去数ヶ月、豪ドルが対ドルで上昇している」と通貨高に懸念を表明。当面低金利を維持して豪経済を下支えする考え。一方、2017年7月時点では「一部都市の住宅価格が大幅に上昇している」と懸念を表明した。


【韓国】
2018年1月18日、政策金利を1.5%に据え置いた。2017年11月に利上げした効果を見極める。

■2017年11月30日、政策金利を1.25%から1.5%に引き上げた。半導体の好調な輸出が牽引し、国内経済が緩やかに回復。米国の12月の利上げ観測が強まっていることに考慮。米国の利上げの先手を打って利上げすることで、資金流出の懸念を封じる狙い。

【フィリピン】
2017年12月4日、政策金利を3%に据え置いた。中銀のエスペニラ新総裁は「国内経済活動の見通しは引き続き堅調で、高い消費・企業マインドと十分な流動性が下支えしている」とした。また、2017年6月には、原油価格の上昇や通貨ペソ安で、インフレ率の予想を2017年は3.3%から3.5%に引き上げた。


【インドネシア】
2017年11月15日、政策金利を4.25%に据え置いた。インドネシア中銀は、米国の利上げやバランスシート縮小による、通過ルピアの下落を警戒している。

■2017年9月22日、政策金利を4.5%から4.25%に利下げした。米利上げや米FRBの資産圧縮はすでに織り込み済みとして、利下げしても資本流出による通貨ルピア相場の下落の恐れは低いと判断した。

■2017年8月22日、政策金利を4.75%から4.5%に利下げした。米FRBの利上げを受け通貨ルピアが対ドルで下落傾向にあることや、原油価格上昇などによるインフレ圧力から資金流出を警戒し、据え置きを続けていたが、米国の利上げペースが緩やかになる見通しとなり、通貨ルピアの下落懸念が後退した。景気回復の遅れからインフレ圧力も弱いため、金融緩和で景気を刺激する。中銀のアグス総裁は「米金利に関する外的リスクは後退した」とした。


【ニュージーランド】
2017年11月9日、政策金利を1.75%に据え置いた。労働党が主導する新政権による財政出動やニュージーランドドル安がインフレ率加速につながると見込み、利上げ時期予想を前倒しした。中銀は新政権が掲げる政策は向こう3年間で、毎年の経済成長率を0.5ポイント押し上げる可能性があるとしている。
 

【マレーシア】
2017年の政策金利は3%を維持した。2017年9月時点では、旺盛な国内消費で高い成長率が期待できる一方、物価上昇率は落ち着いていることから利上げする状況にはないとした。11月には、声明で「世界経済は貿易を中心に成長を続けている」「世界・国内のマクロ経済の底堅さを受け、金融緩和の度合いを見直す可能性もある」と緩和縮小を示唆した。

マレーシアは歳入の30%を石油関連産業から得ている。原油価格の下落局面では財政悪化が見込まれる。


【インド】
2017年10月4日、政策金利を6.25%から6%に引き下げた。インフレ率が下がる中、高止まりしていた金利を引き下げ、成長の牽引役である個人消費を刺激する。穀物生産など農業関連が好調。鉱工業生産指数も回復基調にある。インド政府が決めた高額2紙幣廃止で落ち込んだ個人消費も改善が続いている。

6月時点では、パテル総裁は「2017年度の経済成長率は2016年度より高まるだろう」「年度後半にかけてインフレ率が高まるリスクがある」。今後の金融政策については「マクロ経済の動向を注視した」とした。インド経済は堅調だが、民間投資の回復や銀行の不良債権処理などが必要で、金融政策の変更はこれらの課題が改善された上で打ち出した方が効果的と指摘した。

2月時点では、原油高やルピー安に伴う輸入物価の上昇でインフレ率が再燃する懸念があるとし、パテル総裁は「消費者物価指数上昇率を4%とする目標に身を捧げる」とした。足元の上昇率は3%台だが、世界的に原油や金属価格が上昇基調にある点や、2016年にインド政府が決めた公務員給与の一斉引き上げがインフレ圧力になるとした。

インドは原油の国内利用の80%を輸入している。原油価格が上昇すれば、物価水準を押し上げる可能性がある。
 

【ブラジル】
■2017年12月6日、政策金利を7.5%から7%に引き下げた。中銀は2018年の追加利下げも示唆した。ブラジル経済は緩やかな回復途上にある。金融緩和で自動車や家電など高額商品の販売が復調し、景気を牽引している。

■2017年10月25日、政策金利を8.25%から7.5%に引き下げた。インフレ率の上昇の兆しが出てきており、金融緩和政策の転換時期が近づきつつある。2017年末の政策金利の目標を7%とした。

■2017年9月6日、政策金利を9.25%から8.25%に引き下げた。金融緩和による景気刺激で消費が回復し、経済を牽引する好循環を見込んでいる。メイレレス財務相は2017年の成長率予想の引き上げに言及。2017年内の政策金利目標も引き下げた。

■2017年7月26日、政策金利を10.25%から9.25%に引き下げた。物価上昇が沈静化してきたことから、金融緩和の余地が生まれた。

■2017年5月31日、政策金利を11.25%から10.25%に引き下げた。物価上昇が沈静化してきたことから、金融緩和に余地。金融緩和で家計消費や投資を促し、雇用改善につなげる。
 
■2017年4月12日、政策金利を12.25%から11.25%に引き下げた。物価上昇が沈静化してきたことから景気刺激策に軸足を移す。2017年内に8.5%まで引き下げることも示唆した。

■2017年2月22日、政策金利を13%から12.25%に引き下げた。

■2017年1月11日、政策金利を13.75%から13%に引き下げた。インフレ抑制が想定以上に進んだため、低迷が続く経済を下支える。


【タイ】
2017年12月20日、政策金利を1.5%に据え置いた。輸出や観光業が回復。タイ経済は予想より早いペースで回復する見通しを示した。一方、個人消費や企業の投資活動に弱さが見られる点や中国経済の行方をリスク要因に挙げた。

■2017年3月29日、2017年のGDP成長率を3.2%から3.4%に上方修正した。


【ロシア】
■2017年12月15日、政策金利を8.25%から7.75%に引き下げると発表した。インフレ率が目標の4%を下回っていることから、景気浮揚へさらなる利下げが必要と判断した。また、2018年前半に追加利下げする可能性も示唆した。

■2017年10月27日、政策金利を8.25%にすると決めた。インフレ率が目標の4%弱にとどまり、さらなる利下げが可能と判断した。また、数ヶ月内に追加利下げする可能性も示唆した。

■2017年9月15日、政策金利を9%から8.5%に引き下げた。インフレ鈍化によって年内に追加利下げを実施する可能性にも言及した。

■2017年6月16日、政策金利を9.25%から9%に引き下げた。インフレ率が鈍化し目標の4%に留まっていることから、景気浮揚に向けた利下げに踏み切る環境が整ったと判断した。

■2017年4月28日、政策金利を9.75%から9.25%に引き下げた。通貨ルーブルが対ドルで上昇し、輸入品などのインフレが鈍化。利下げに踏み切る環境が整ったと判断した。2017年内にさらに利下げする可能性も示唆した。

■2017年3月24日、政策金利を10%から9.75%に引き下げた。通貨ルーブルが対ドルで上昇し、輸入品などのインフレが鈍化。利下げに踏み切る環境が整ったと判断した。2017年内にさらに利下げする可能性も示唆した。