政府は、宇宙関連産業の市場規模を2030年初頭までに現在の2倍の約2兆4000億円に引き上げる目標を持つ。ロケットや衛星など関連機器の開発だけでなく、衛星のデータ活用などソフト面での産業振興にも注力。衛星データをビッグデータとして民間に提供することで、IoTやAIと組み合わせて新産業の創出を促す。

例えば、気象衛星の画像データを活用し、農産物の成長スピードを観察して収穫量の予想につなげる。地震発生時には津波の押し寄せる方向や速度、海面の水位の変化を観察し、住民への素早い避難指示に役立てる。メタンハイドレートなど日本周辺の海底資源開発にも活用する。


政府の動き

内容 時期
宇宙のゴミ(デブリ)対策を国連と連携することを基本方針に盛り込み 2017年内
小型ロケットの発射場新設 打ち上げ業務を民間に開放 2018年


【宇宙のゴミ(デブリ)対策】
政府は2017年内に改定する宇宙戦略の新たな基本方針に、人工衛星やロボットの残骸など宇宙のゴミ対策を国連と提携することを盛り込む。宇宙ビジネスに政府系金融機関が投融資する仕組みを作り、企業参入を後押しする。衛星の衝突を防ぐ方策についても米欧などと議論を進める。


【小型ロケット発射場】
政府は国内で新しい小型ロケットの発射場新設を検討。2017年度にも国による認定や支援の方向性を決め、2018年度には国が事実上独占してきた打ち上げ業務を民間に開放する計画。

新しい発射場は企業が小型ロケットを持ち込み、国の許認可の下で打ち上げることを想定。新設が決まれば、国内では内之浦宇宙空間観測所、種子島宇宙センターに次ぐ第3の発射場となる。


宇宙ビジネスを対象とした投融資

日本政策投資銀行は、宇宙ビジネスを対象とした投融資を始める。2017年~2019年に1000億円規模の資金枠を確保し、ベンチャー育成などを支援する。


宇宙ビジネス関連企業の動き

三井物産は、農作業の生育管理や森林伐採の監視などに衛星で撮りためた画像を使う研究を実施。将来的には穀物取引の参考にしたり、船舶の運航管理に使う。大林組は、2050年の完成を想定して宇宙エレベーター建設の構想を持つ。ANAホールディングスとHISは、有人宇宙旅行を目指すPSエアロスペースに出資。ANAホールディングスは、将来の有人宇宙旅行の参入も視野に入れ、輸送技術の確立と安全航行のためのノウハウを習得したい考え。ソニーは、欧州エアバスグループなどと衛星向けアンテナ共有サービスを手がけるインフォステラに8億円を出資。また、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同でデジタルカメラ製品を国際宇宙ステーション(ISS)で活用する取組に参加している。

コード 銘柄 内容
6758 ソニー エアバスなどと衛星向けアンテナ共有サービスのインフォステラに出資
8031 三井物産 農作業の生育管理や森林伐採の監視などに衛星で撮りためた画像を使う研究
1802 大林組 2050年の完成を想定した宇宙エレベーター建設構想
9202 ANAHD 宇宙ごみ(デブリ)除去のアストロスケールに出資
有人宇宙旅行を目指すPSエアロスペースに出資
9603 HIS 有人宇宙旅行を目指すPSエアロスペースに出資
7203 トヨタ JAXAと月や火星などの宇宙探査で協業を検討
- アイスペース 2020年半ばに月を周回する探査機を打ち上げ
2021年に月面に着陸する探査機を打ち上げ
7011 三菱重工業 次期基幹ロケットH3の価格を現行のH2Aより半値に 2020年度に打ち上げ試験を計画


【衛星向けアンテナ共有サービス】
インフォステラは2016年創業。人工衛星と地上との通信運用会社などから借りて利用者に時間貸しするサービスを展開する。衛星の打ち上げ数が増加し、宇宙から得られるデータの重要性が高まっている。一方で、宇宙通信を支える地上のアンテナが不足している。インフォステラはアンテナに設置する機器を独自開発。調達資金を活用して製品の提携先を広げる計画。


【宇宙のごみ(デブリ)除去】
宇宙ベンチャーのアストロスケールは、2020年に宇宙のごみ(デブリ)除去のサービス実用化を目指す。2018年初旬までに微小デブリ計測衛星を、2019年前半にデブリ除去衛星実証機の打ち上げを予定する。2017年7月にANAホールディングスや切削工具のOGSなどが約28億円を出資。調達資金は、ごみを除去する衛星の量産や各国の宇宙機関と連携するための海外拠点の整備に充当する。

日東製網は、JAXAと「デブリ」と呼ばれる宇宙のゴミを除去する技術を共同開発。無結節網技術を活かし、デブリ除去システムに必須の素材である「伝導性網状テザー」と呼ばれる電気を通すひも場の開発に取り組む。

コード 企業 内容 時期
- アストロスケール 微小デブリ計測衛星の打ち上げ 2018年初旬
デブリ除去衛星実証機の打ち上げ 2019年前半
デブリ除去のサービス実用化 2020年
3524 日東製網 デブリを除去する技術をJAXAと共同開発 -


【グローバル測位サービス】
日立造船やデンソー、日本政策投資銀行など5社は、日本版GPS衛星を使った位置情報サービスをアジア・オセアニア地域で手がける新会社「グローバル測位サービス」を設立する。日本版GPS「みちびき」は2018年春をめどに4基体制が整い、誤差最小6センチメートルという高度な位置情報が実現する。タイやベトナムで社会問題となっている渋滞の緩和やオーストラリアでは広大な農地で農機の無人走行に活用する計画。また、新会社はトヨタ自動車や日産自動車など国内自動車メーカー9社に対して、将来の自動運転技術への応用について協力を求める。


【トヨタ自動車】
2019年3月12日、JAXAと月や火星などの宇宙探査で協業を検討すると発表。燃料電池車の技術を活用。月面を移動する有人探査車を開発する。地球から運んだカートリッジに入った水素を酸素と交換しながら、合計で1万キロメートル以上の月面走行が可能という。

JAXAは、2029年~2034年に5回に分けて実施予定の友人探査で、探査車を使いたい考え。


【アイスペース】
米スペースXとロケット打ち上げ契約を締結。2020年半ばに月を周回する探査機を、2021年に月面に着陸する探査機の打ち上げを予定する。


【三菱重工業】
JAXAと次期基幹ロケット「H3」の価格を現行のH2Aに比べて半値にする目標。2020年度に打ち上げ試験をする計画。

 

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