欧州中央銀行(ECB)は、2015年1月22日、国債を大量に買い入れて資金を流す量的緩和の導入を決めた。買い入れ対象はユーロ圏の政府のほか、欧州連合(EU)の国際機関が発行するユーロ建て債券。買い入れ規模は毎月600億ユーロ(約8兆円)。2015年3月から2016年9月まで行い、買い入れ総額は1兆ユーロを超える見通し。
ECBドラギ総裁は、2%近い中期的な物価上昇率の目標に向け、達成が見通せるまで必要なら量的緩和を続ける見通しを示唆した。
ECBの金融政策
ECBは、2013年11月、域内の資金需要が鈍く、銀行再生が道半ばであることから、潤沢な資金供給を2015年まで続けることを決定。また、EU域外向け輸出の7%を占める対ロシア輸出は、ウクライナ情勢が「潜在的に景気を脅かす恐れがある」とし、ロシア経済の先行きが懸念材料となっている。
【量的緩和】
項目 | 内容 |
買入規模 | 毎月600億ユーロ |
総額1兆ユーロ | |
買入対象 | ユーロ圏政府、EU関連国際機関が発行するユーロ建て債券 |
期間 | 2015年3月~2016年9月 |
【政策金利】
年 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
2015 | 0.05 | - | 0.05 | 0.05 | - | 0.05 | 0.05 | - | 0.05 | 0.05 | ||
2014 | 0.25 | 0.25 | 0.25 | 0.25 | 0.25 | 0.15 | - | 0.15 | 0.05 | 0.05 | 0.05 | 0.05 |
【マイナス金利】
民間銀行が余剰資金を中央銀行に預け入れた場合に一定の手数料を求めるもの。銀行が中央銀行に資金を滞留させず、貸し出しに誘導する効果がある。
2014年 | 6月 | 9月 |
マイナス金利 | 0.1% | 0.2% |
【資産担保証券(ABS)の買い入れ】
資産担保証券(ABS)は銀行の融資債権を証券化したもの。中央銀行によるABSの購入は、銀行の債権売却を助け、企業向けの貸し出しに動きやすくなる効果がある。
2014年10月 | |
ABS買い入れ | 開始 |
【低利長期資金供給】
2014年6月5日、域内企業への融資積み増しを公約する銀行に、低利の長期資金を最大4年間に渡って供給。供給額は4000億ユーロを想定している。
2014年6月~2018年 | |
資金供給 | 4000億ユーロ |
EUの経済成長率と消費者物価指数
【見通し】
2015年 | 2016年 | 2017年 | |
実質成長率 | 1.4% | 1.7% | 1.8% |
消費者物価上昇率 | 0.1% | 1.1% | 1.7% |
【経済成長率推移】
見通し | 1-3月 | 4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 通年 | ||
EU | 2015年 | 1~1.5% | 1.0% | 1.2% | |||
2014年 | 1.2% | 0.2% | 0% | 0.1% | 0.9% | 0.9% |
欧州圏の銀行
欧州中央銀行(ECB)は、2014年10月26日、ユーロ圏19カ国で営業する主要銀行130行の資産査定(ストレステスト)の結果を発表し、25行が不合格、資本不足総額は約250億ユーロ(約3兆4000億円)だった。不合格となった25行のうち12億は約150億ユーロの増資を行い資本不足を解消。13行は2015年7月までに増資を終える見通し。
項目 | 内容 |
資本不足総額 | 250億ユーロ(約3兆4000億円) |
解消 | 150億ユーロ(約2兆400億円) |
未解消 | 100億ユーロ(約1兆3600億円) |