ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングは、患者本人の細胞を培養し、移植する「自家移植」を対象にした再生医療製品を開発している。製品は皮膚と軟骨、角膜の3種類。

やけど治療向け自家培養表皮「ジェイス」は2007年に製造販売が承認。やけどを負った患者から正常な皮膚を採取し培養、移植する。軟骨が欠損した患者の治療に使用する「ジャック」は2012年7月に承認。患者のひざ関節に器具を差し込み、正常な軟骨を採取。それを工場で培養し、軟骨を作製。欠損部に埋め込む。角膜では患者自身の角膜組織を原料とし、セルシードと共同開発した培養皿で自家培養角膜シートを培養している。

また、親会社の富士フイルムが開発した生体適合に優れるリコンビナントペプチドを活用した再生医療製品の開発を受託し製品化を進捗。2014年11月に再生医療等安全確保法が施行されたことから、再生医療の提供機関や細胞培養加工製造事業者へのコンサルティング事業、細胞培養受託事業を開始した。


自家培養表皮「ジェイス」

やけど治療向け自家培養表皮「ジェイス」は2007年に製造販売が承認され、2009年1月に保険対象となった。やけどを負った患者から正常な皮膚を採取し培養、移植する。ジェイスには保険適用に関し「施設基準」や「算定限度」など留意事項が付与されている。留意事項のうち「算定限度」に関しては、2014年4月から1患者に月20枚から40枚に緩和された。ジェイスの適用拡大による表皮水疱症の治療を目的として、2012年5月に治療計画書を独立行政法人医薬品医療機器総合機構に提出し、治験を行い、2014年6月に終了した。 ジェイスは将来的に国内売上高が30億円まで伸びる可能性があると見込まれている。

ジェイス 内容
適応症 表皮水疱症治療
先天性巨大色素性母斑
見通し 将来的に国内売上高は30億円まで伸びる可能性

【先天性巨大色素性母斑】
2014年11月25日、先天性巨大色素性母斑で再生医療製品に指定された。先天性巨大色素性母斑とは、生まれつき黒褐色のあざが体の広範囲にみられる疾患で、悪性化して皮膚がんになりやすい危険性がある。従来は母斑を切除して縫い合わせたり、体の他の部位から採取した患者自身の皮膚細胞を移植する治療が行われてきた。ジェイスは患者自身の皮膚組織を原料に培養・製造し、患者の母斑切除部に移植することから、少量の組織採取で広範囲の治療が可能になり、患者の負担が少なくてすむ。患者数は新生児の約2万人に1人とされている。


自家培養軟骨「ジャック」

 軟骨が欠損した患者の治療に使用する「ジャック」は、2012年7月に承認され、2013年4月に保険対象となり販売が開始された。患者のひざ関節に器具を差し込み、正常な軟骨を採取。それを工場で培養し、軟骨を作製。欠損部に埋め込む。 保険償還価格208万円で保険収載。保険適用に関し「施設基準」や「実施医基準」などの留意事項が付与されており、医療機関と連携して留意以降への対応を進めている。2015年4月、ジャックを使用できる医療機関は全国で170に拡大。全都道府県で使用可能になった。 将来的に国内売上高は数百億円まで伸びる可能性があると見込まれている。

ジャック 内容
適応症 膝関節における外傷性軟骨欠損症
離脱制骨軟骨炎
見通し 将来的に国内売上高は数百億円まで伸びる可能性

【生産能力増強】
ジャックの生産能力を増強する。投資額は約10億円。生産能力を500個から数千個に増やす。

項目 内容
投資額 10億円
生産能力 500個→数千個


角膜

【口内細胞で角膜再生】
大阪大学の西田幸二主任教授らは、口の中から取った細胞をシート状に加工し、やけどや病気で傷ついた目の角膜に移植して視力を回復させる再生医療の医師主導治験を始めるもよう。半年かけて患者6人を募集。移植後1年間観察して、角膜の透明性や視力を確かめる。

細胞シートの製造はジャパン・ティッシュ・エンジニアリングに委託する。2017年内に再生医療製品の製造や販売に関わる承認の申請を目指す。

項目 内容
治験 大阪大学
細胞シート製造 ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング
承認申請 2017年内


【角膜上皮】
2015年3月、角膜が混濁し、視力低下の原因となる角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした自家培養角膜上皮が希少疾病用再生医薬品製品に指定された。指定を受けると試験研究費に対する助成金交付や優先審査、再審査期間の延長など優遇措置が受けられる。製造販売承認取得に向けた活動を展開する。

患者自身の角膜組織を原料とし、セルシードと共同開発した培養皿で自家培養角膜シートを培養。患者に移植する。患者数は年間500人程度。J-TECは2014年10月より治験を実施している。


業績

  売上高 経常利益 純利益 純資産 総資産 自己資本比率
2015年(予) 17億円 ▲5.8億円 ▲5.8億円 - - -
2014年 13億円 ▲6.8億円 ▲6.9億円 83億円 88億円 94.8%
2013年 10億円 ▲8.2億円 ▲8.2億円 21億円 32億円 50.2%
2012年 5.6億円 ▲10億円 ▲10億円 23億円 32億円 72.5%
2011年 4.7億円 ▲10億円 ▲10億円 33億円 44億円 75.5%
2010年 3.5億円 ▲11億円 ▲11億円 44億円 58億円 77%

※2014年3月 富士フィルムに新株予約権を発行し73.8億円を調達。